Drop.019『 The EMPRESS:R〈Ⅰ〉』【4】
「そ、その……、――アタシは、そうして頂きたくてお尋ねしたのではなくて……」
「?」
雷は、その法雨にまた不思議そうにすると、問う様に眉を上げる。
そんな雷に、法雨はさらに続ける。
「その……、――京から聞く限り、雷さんは、随分とお悩みなようでしたので……、――もし、機会があれば、――アタシも、自分の出来る事でお役に立てればと思っていたんです……」
「“役に”……」
法雨は頷く。
「はい。――アタシは、“あの日”、雷さんに助けて頂いてから、大したお礼も出来ていませんでしたので……。――恩返しとまではいきませんが……、――せめて、お礼になる様な事がしたくて」
そんな法雨に、雷は、“参った”とでも言いたげに、その大きな右手で自身の後ろ首を擦ると、苦笑して言った。
「法雨さんは……、本当にお優しい方ですね」
法雨は、その言葉に首を振って言う。
「とんでもありませんっ……。――その、お恥ずかしいハナシ。――アタシは、普通の恋愛らしいモノは、大して経験しておりませんけれど……、――そんなアタシも、お店では、本当に沢山の方々から色々なお話を聞かせて頂いてきたんです。――ですから、そうして、沢山のお客様からお借りしている経験だけは、山ほどありますので……、――きっと、少しはお役に立てるんじゃないかと……」
そして、法雨がそこまで紡ぐと、雷は、さらに困ったような笑みを浮かべ、言った。
「そんなにも気遣って頂いて、本当にありがとうございます。――ただ、そう仰って頂いたという事は……、――“恋愛的な事情で”しばらく難儀している、という事も、既にご存知なんですね。――そうなると、なんと云いますか……、――少し、気恥ずかしいものがありますね……」
その言葉に、しばし驚いた法雨は、慌てて謝罪する。
「ヤ、ヤダ。ごめんなさい。――アタシ、京があれやこれや話すものですから、――“その事”まで、アタシに伝わっていた事も、ご存知かと思って、つい……」
「ははは。――いやいや、いいんですよ。――伝わってまずい話というわけでもないですから、謝らないでください。――ただ、まぁ、情けない話なので」
そんな雷の様子に、法雨は、彼の――これまでとはまた違った柔らかな一面を見たようで、それに心が高揚するのを感じながら、にこりと笑んで言う。
「“情けない”なんて、それこそ、とんでもありませんわ。――恋をすれば、誰しもが、あれやこれやと苦労するものです」
それに、雷は、またひとつ苦笑すると、しばし間を置いた後、法雨に問うた――。
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