表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命に惑うケモミミBL長編♂愛情深ハイスペ狼×恋歴難美人オネェ猫『ロドンのキセキ◆翠玉のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』全31話  作者: 偲 醇壱
◆ The EMPRESS:R ◆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/108

Drop.019『 The EMPRESS:R〈Ⅰ〉』【2】

「ははは。――こんな豪雨の中ですからね。――足元か空くらいしか見てられませんよ」

 そして、そう言うなり雷は、ビルの案内プレートを見るため軒先から半身を出した法雨を、傘で護る様にした。

 法雨は、その雷に気付き、慌てて言った。

「アラ、ごめんなさい。――雷さんが濡れちゃいますから、アタシは大丈夫ですわ。――それと、先ほどのお話ですけど、――依頼人でもないのに、事務所にお邪魔してよろしいんですか?」

 法雨が、さっと軒先にその身を引っ込めながら言うと、雷は変わらぬ笑顔で頷く。

「勿論です。どうぞ遠慮なく。――それに、毎日忙しくしておられるんですから、風邪をひいてしまっては大変でしょう」

 雷の云う通り、法雨は、家族が代々営んできた大切なバーを営む事も、自身の生き甲斐としているだけあり、風邪などをひいて、望まぬ休日など作ってはいられない――というのが本心だ。

 それゆえ、法雨は、この度の雷の厚意を、丁重に受け取る事にした。

「――そうですね……。――それじゃあ、恐れ入りますけれど……、――今回は、お言葉に甘えさせて頂きますね」

「はい。――ぜひ」

 そして、そんな法雨が礼を言うと、雷はまたひとつ笑むなり、すっかりとずぶ濡れた法雨を、丁重に事務所へと案内した。

 ✦

「――どうぞ、中へ」

 雷は、事務所のドアを開けると、法雨を中へと促した。

「あ、ありがとうございます。――でも、このまま入ると汚してしまいますわ……」

 そう恐縮し、中に入るのを躊躇う法雨の秋物ジャケットは、両手に持っていた彼の荷物と共に、すっかりと濡れてしまっていた。

 しかし、そんな法雨をも安心させるように笑むと、雷は再度促した。

「大丈夫ですよ。――ですので、さぁ」

「す、すみません。――じゃあ、このままお邪魔させて頂きますね」

「はい。――どうぞ、お気になさらず」

 そんな雷の厚意に背を押され、法雨がおずおずと事務所に入ると、扉を閉めるなり雷は言った。

「――ジャケットの中も濡れてしまっていますか?」

「あぁ、いえ。――幸い、ジャケットの中は無事でした」

「それは良かった。――では、こちらにどうぞ。――あぁ、濡れてしまっているところは、これで拭いてください」

「あぁ、本当にすみません。――ありがとうございます」

 雷に促されたソファに腰掛ける前にと、尾や髪から滴る雫をハンカチで拭う法雨に、雷は、清潔感のある柔らかなタオルを丁寧に手渡した。

 法雨がそれに恐縮しながら受け取ると、雷は笑んで続けた。

「法雨さんは、紅茶でよろしかったですか?」

 その問いの意図を察し、法雨はあたふたと恐縮しながら応じる。

「えっ、あ、あぁ、はい。――紅茶で、大丈夫です……。――もう、本当にすみません……。――何から何まで」

「ははは。俺が勝手にお誘いしたまでですから、そう恐縮なさらず。――それに、空が機嫌を直すのには、まだしばらくかりそうですからね」

 タオルを受け取った法雨が、しきりに恐縮するので、一度事務所の奥に向かった雷は、そこから安心させる様にして言うと、次いで、奥から戻ってきては、洒落たティーカップを法雨の前にことりと置いた。

 そして、落ち着いた高級感のあるローテーブルを挟んだ向かいのソファに腰かけると、雷は、自身の前にマグカップを置いた。

 そこで――、洒落たティーカップの中、温かに(きら)めくオランジュカラーに対し、向かいのシンプルなマグカップでは、暗い鳶色(とびいろ)が温かな水面を揺らしている事に気付いた法雨は――、以前、不意に投げかけられた京の言葉を思い出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ