Drop.018『 JUSTICE:U〈Ⅲ〉』【1】
雷の初恋が発覚するよりも前の事――、その日もまた、法雨の店で一夜を明かした京であったが、その日の彼は、一睡もせず朝を迎えると、その閉店後の店内で、法雨と雑談をしながら店仕舞いを手伝っていた。
しかし、その日――、深夜中に退勤していた桔流は、その場には居なかった。
そして、そんな――“密会の事実を知る者同士のみ”といった状態は、その日の彼らを、図らずも、“密会当時の事”を振り返らせる状況へと誘った――のだが。
「――俺たち、何をすれば、姐さんへの償いになるのか、度々話し合ったりはしてるんすけど……」
その中――、京がふと、そう紡いだ――その時。
「――その話。――俺も聞いていいですか……」
二人きりであると思っていた店内に、静かな怒りを含んだ様な――桔流の声が、据えられた。
― Drop.018『 JUSTICE:U〈Ⅲ〉』―
「――き、桔流君……。――アナタ、どうして……」
その声に驚きながらも、バックヤードからフロアへと入ってきた桔流に法雨が問うと、彼は、法雨ではなく、“もう一人”を冷たく見据えながら、感情なく答える。
「忘れ物をしてしまったので……、取りに来たんですけど……。――この時間だし、締め作業、手伝おうと思ったんですよ……。――でも……、――俺が居ると、まずかったみたいですね……」
「え、えっと……」
その――普段とはかけ離れた低く抑揚のない声だけでも、桔流がどれほどの憤りを抱いているのか瞬時に解した法雨は、なんとか桔流を落ち着かせるべく、言葉を紡ぐ。
「き、桔流君。――その、今の話は……」
そんな法雨にも、桔流はやはり一切の目もくれず、一点を冷たく見据えたまま制するようにして言う。
「あぁ、大丈夫ですよ……。お気遣いなく……。――お邪魔みたいなんて、俺はこのまま帰りますから……。――……でも……、――その前に……、――ひとつだけ……、――確認させてもらいますね……」
そして、そう言い切った途端――、桔流は足早に京の方へと歩み寄ると乱暴に胸倉を掴み、近場の壁にその背を叩きつけた。
「き、桔流君……っ、――ちょっと待って……っ」
法雨はしばし呆気にとられながらも、咄嗟に止めに入ろうとするが、そんな法雨すらも制するような、怒りを含んだ――先ほどよりも低く唸る様な声で、桔流は、壁に押しやった京に問うた。
「今の話は事実か……」
その――酷く威圧的で怒りに満ちた桔流の声は、法雨も初めて聞くほどのものであった。
桔流は、高校生の頃、その凛と整った――美人とも云える外見に見合わず、日々派手なケンカに明け暮れていた――という話は法雨も聞いてはいたが、法雨と桔流が出逢ったのは、彼がすっかりと落ち着いた後の事だ。
それゆえ、その荒々しい姿を見る機会も、一切なかった法雨は、眼前の桔流の対応に、思わず迷う。
「正直に答えろ……。――今の話は……事実なのか……」
その桔流に気圧され、法雨はついに見守る事しか出来なくなったが、その中――、胸倉を締め上げられながら問われた京は、“あの当時”の面影を纏わせながら、物怖じする様子もなく、まっすぐに桔流の目を見据えて、言った。




