Drop.017『 JUSTICE:U〈Ⅱ〉』【1】
京の追加報告によると、日頃から雷は、“法雨のアレソレの好み”を、己の助手に問うているらしい。
「――あ、因みに。――今日のこの和菓子も、こないだ俺が、“コレ、姐さんが好きなヤツなんですよ~”って言ったから買ったんだと思いますよ」
法雨は、そのさらなる経緯報告を受け、困惑を深めながら問う。
「え? ――このお菓子って、――雷さんがどこかに行かれた時のお土産とかじゃないの?」
「へ? 違いますよ? ――コレは、――“しばらく店に行けてないから、せめて”って事で、預かってきたヤツですから」
「――………………」
― Drop.017『 JUSTICE:U〈Ⅱ〉』―
(一体、どういう事なの……?)
京が雷について紡げば紡ぐほど、法雨の心内では疑問の糸が絡まり合ってゆく。
どうやら雷は、ぱったりと店に顔を出さなくなった割に、京には随分と法雨の話をしている上、まさに執心と云えるほど、法雨の事を知ろうとしている様である。
(アタシはてっきり、雷さんに避けられているものだと思ってたけど……。――アタシの好みを知ろうとしてくださってるという事は、アタシを煙たく思ってらっしゃるわけではないという事よね……。――でも、なら……、――どうしてうちのお店を避けていらっしゃるのかしら……)
法雨は、黙したまま首を傾げる。
――“特定の誰かの好みを知ろうとする”。
それは、特に――“その特定の誰かを好きになってしまった時”には、必ずと云ってよいほど、恋する者のほとんどがとる行動であろう。
(でも……、もし、とんでもなく自意識過剰に考えて、初恋の相手がアタシだったとしても……、――やっぱり、おかしいのよね……。――だって、アタシは有名人でもないし、既に婚約者や恋人が居るわけでもないし、年齢だって、雷さんとは大して離れてもいないし……、――だから、アタシは、“恋をしてはいけない相手”にはならないわ……)
さらに、法雨は、京の様な仕事仲間でもなければ、――一度は雷に救われた身ではあるが、一度だって“依頼人”になった事はない。
(それに、アタシは“あんな事”があっても、体の関わりに関しては一切のトラウマを抱えたりもしていないし、その事は、以前、雷さんにもちゃんとお伝えしてあるもの……。――だから、雷さんが、アタシに恋をしてはいけない理由なんて、見当もつかな……)
「――………………」
法雨は、そうして延々と思考を巡らせる中、雷との事を様々と思い出しながら、これまでの日々の記憶をひたすらに手繰っていった。
そして――、ついに、雷が紡いだ、とある言葉に辿り着くと、――法雨は、思わず、心内でも黙した。
――貴方は、“オオカミ”が、お嫌いなんですか……。
(――………………………………。――アタシは……)
「姐さん? ――さっきから黙ったままっすけど、――どうかしたんですか?」
その京の声で我に返ると、法雨は咄嗟に笑む。
「え? ――あ、あぁ。――ちょっと、雷さんの初恋相手の謎について、改めて情報を整理してただけよ」
「あぁ、なるほど。――いや~、それにしても、――マジで誰なんすかねぇ……。――雷さんが、“恋をしちゃいけなかった”――初恋相手」
――えぇ……嫌いよ。
朝陽のみがその場を照らしていた、薄暗い倉庫の中――、法雨は確かに、雷にそう言った。
そんな法雨が、もしも、その――“大嫌いなオオカミ”に、恋をされたとすれば――。




