Drop.016『 JUSTICE:U〈Ⅰ〉』【3】
(好きな人の口から、別の男の話を頻繁にされるなんて……、流石の雷さんでも、きっと辛いはず……。――しかも、その男と一緒に居た時に話した事も楽しそうに話されるなんて……、――苦痛よ……)
「――なら、京。――その……、もしそうだとしたら、今後しばらくは、アタシの名前を出したり、アタシの話をするのは、控えてあげた方がいいかもしれないわ」
「え? どうしてっすか?」
当然ながら、京はそれに、不思議そうにした。
無論、法雨はその真意を明かしていないのだから、当然の事ではある。
「えっと……、それは……」
だが、その意を明かす事は、雷のためにも出来る事ではない。
(――ここは、嘘でも、なんとか納得させられそうな理由を作るしかないわね……)
「ほ、ほら……。ここは、色んなお客様がいらっしゃるから……、恋人同士のお客様も多いじゃない? だから、アタシとか、お店での話を聞く事で、ここで見かけた恋人たちの事を思い出して、お辛くなったりもしてるかもしれないでしょ? ――なんといっても、雷さんの恋は、実るのが難しい恋なんですもの。――そう考えれば、――アタシが言いたい事、分かるわよね?」
法雨は、それに対し“確かに、そうっすね”――と、素直に応じる京の言葉を期待した――のだが、京はそれに、何故か難色を示した。
「えぇ~? それは無理っすよ~……」
「どうしてよ」
法雨が、眉間に皺を寄せると、京は続ける。
「だって~……、――例え俺が、姐さんや店の話を出さないようにしても、――雷さんが尋いてきますもん……」
「え……?」
法雨は、その意外な言葉に、先ほどとは別の心から眉間に皺を作った。
そんな法雨に、京は言う。
「コレ、――姐さんには話してなかったっすけど。――そりゃあ、勿論、俺から姐さんの話をする事は多いっすよ? でも、――それと同じくらい、雷さんから、姐さんの事を尋かれるんすよ」
「“雷さんから”? ――ち、因みに、どんな事を尋かれるの?」
しばし困惑しながらも、法雨が問うと、京は思い出す様にして答える。
「ん~……、例えば~……、――元気にしてるか~、体調が悪そうだったりはしないか~、とか~、――変な輩に絡まれたりはしてないか~、とか~、――あと~、何か困ってそうなら教えてくれ~とか~……、――っすかねぇ」
「あぁ、なんだ。――そういう事……」
しばし動揺した法雨だったが、京の言葉を聞き終えると、安堵と共に脱力する。
(じゃあ、雷さんは、未だにアタシを“被害者”として心配してくれていて、――それで、自分も大変な中なのに、アタシの事も考えて、色々尋いてくれてるってわけね……)
恐らくは、雷の心の中では今も、“あの日”の事が印象に強く、だからこそ、法雨がまた“あのような事”に巻き込まれていないか、案じ続けてくれている、という事なのだろう。
(ご心配をかけ続けている事は申し訳ないけれど……。でも、――アタシに嫉妬してるとか、アタシが京の事で苦しめるような事をしてしまってる、というわけでないなら、――それは、良かったわ……)
そして、法雨は、その事に改めて胸を撫で下ろした――のだが、不意に続けられた京の言葉により、撫で下ろした胸は、すぐさま別の困惑を抱える事となった。
「あ。そうそう。――あとは、姐さんが好きなモノとかも、ちょくちょく尋かれますね。――食いもんとか、酒とか……。――こないだは、好きな色も尋かれましたよ」
「え……?」
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