Drop.016『 JUSTICE:U〈Ⅰ〉』【2】
「だって、アンタみたいなコって……。――アタシから見たら、“頂く側のオス”に、かなり好かれそうだもの」
「えぇえ~……、そんなぁ~……。――俺は、どっち相手でも“頂く側”がいいっす~……」
嘆く京を、法雨は楽しげに笑う。
「そういうコト言ってる坊やこそ、――より一層、食べたくなるものなのよ。――オスってのは」
しばしの間こそ、諸事情により“頂かれてやっていた”法雨だが――、その諸事情さえなければ、法雨は専ら、年下や愛嬌のあるタイプ、その他スレンダーなイケメンは“食べたい派”なのだ。
そんな法雨は、未だ駄々をこねる京を見やり、ふと思う。
(――ううん……。――でも、前は“ありえない”とは思ったけど……。――そう考えてみると、“ありえなくもない”のかしら……。――雷さんって、面倒見が良い上で聡明な方だから、――もしかすると、ちょっとおバカな子の方が、むしろ可愛く見えるって事も……)
と、すれば――。
(あえて、京に隠した事もあるし……。――もしかして、雷さん。――本当に、京の事を……)
あの――誠実で真面目な雷の事だ。
(自分が窮地から救い、今は、助手として時間を共にしている“護るべき存在”――、そんな、弟の様に大切に想っている京に対しても、雷さんはきっと、“そんな彼に恋をするなんて”って思う可能性もあるわよね……。――しかも……)
先ほど、法雨に対しても京は、“頂く側でありたい”と駄々をこねたくらいだ。
(もしかしたら、恋人ができないって話も、雷さんに聞いてもらってたかもしれないし。――ともなれば、きっと、“食べる側”でありたいっていう気持ちも、流れで聞いてるかもしれないし……)
そうであれば、恐らく“頂く側”であろう雷は、その立場に加え、京の気持ちをも踏まえてしまっては、告白すら出来るはずもない。
(雷さんの事をこれだけ尊敬してる京相手だし、本来なら、話は早そうだけど……。――純潔を死守したい気持ちを優先してくれる雷さんだからこそ、難しくなってしまってるわねぇ。――………………ところで)
もし、そうであるならば――、と法雨は、新たな懸念を胸に抱く。
(もし、本当に雷さんが京に恋をしているのだとしたら、京が一人でアタシの店に毎晩来てる事は、雷さんにとって寂しい事なんじゃないかしら……)
叶わぬ恋とは云え――、恋をしている相手が、自分とは別の――恋愛関係に発展する可能性のある男に懐いているとなれば、――それは嬉しい事ではないだろうし、人によっては嫉妬心を抱いたり、悲しい気持ちにもなるだろう。
(そうだとしたら、アタシの事も、今は考えたくないかもしれないわね)
法雨は、そのような懸念から、改めて京に問う。
「ねぇ、京。――アナタ、雷さんと一緒に居る時、アタシの話もしてたりするの?」
「へ? あぁ……、はい。そうっすね。――今日みたいに、飲みに誘う時は勿論すけど。――仕事の合間とか休憩中も、姐さんと話した事をよく話すんで……。そういう意味では、姐さんの話も結構してますよ」
「そう……」
法雨は、その京の言葉に、いよいよと申し訳ない気持ちになった。




