Drop.016『 JUSTICE:U〈Ⅰ〉』【1】
法雨が、雷の初恋報告を受けてから一週間ほどが経過した、その日もまた――、京は、“伝達役”としての任をこなしていた。
しかし、そんな京が助手を務める探偵殿はと云えば、その一週間の間も、法雨の前に現れる事はなかった。
「――雷さん……。――こないだ、開いてないドアに衝突してたっす……」
「それは、かなり重症ね……」
「はい……」
そして、その探偵殿――雷の様子を報告する助手の面持ちは、やはり明るくはなかった。
― Drop.016『 JUSTICE:U〈Ⅰ〉』―
「しばらく、お店にもいらしてないし……。――相当お悩みなのね……」
(以前は、二、三日に一度はいらしてたのに……。――京から初恋の話を聞いてからは、ぱったりいらっしゃらなくなって……)
「そうなんすよ。――なんか、マジで深刻な感じかもしれないっす……。――俺も流石に心配になってきたんで、今日、“気晴らしに姐さんトコ行きませんか”って誘ったんすけど……。――コレだけ持たされて、自分はいいって、また仕事しだしちゃって……」
その晩も変わらず、カウンター端の席で酒を楽しむ京は、“コレ”と言うと共に、その日、雷に持たされたらしい――菓子折りが入った紙袋を持ち上げた。
それを丁寧に受け取って袋を覗けば、そこには季節ものの和菓子が上品に佇んでおり、偶然にも法雨のお気に入りの品だったのだが――、状況が状況なだけに、法雨は、手放しでは喜べなかった。
「ううん……」
そんな法雨が、和菓子を見つめながら案じる様に唸ると、京は零した。
「ほんと……、誰なんすかね~……。――あの雷さんを、あんな風に骨抜きにしちゃうくらいの“魔性の人”って……」
「さぁねぇ……。――でも、あの雷さんを惚れさせるほどの魔性であるとしたら、――本物の悪魔なのかもしれないわね」
京はそれに、思い出す様な素振りで言う。
「魔性の悪魔か~……。――って事は、アレっすかね。――えっと、名前は忘れましたけど……。あの、――エロい事してくる悪魔……」
「淫魔ね。――インキュバスか、サキュバスかは分からないけど」
「そうそう! それっす、それっす」
京は、身を乗り出しつつそう言うと、次いで、頬杖をつき、羨ましげに続けた。
「――でも、そうだとしたら、雷さんがちょっと羨ましいっす……。――エロい悪魔にだったら、俺も骨抜きにされてみてぇ……」
恐らくは、大変都合の良い想像をしているのであろう京に、悪戯っぽい表情で、法雨は言った。
「“骨抜き”ねぇ……。――でも、その悪魔に惚れられたのがアナタだったら、骨を抜かれた上で、“後ろから”頂かれちゃうかもしれないわよ?」
すると、京は青ざめながら言った。
「えぇっ……、――な、なんで俺は“ソッチ”になっちゃうんすか……。――俺の“純潔”は一生もんがいいっす……」
そんな京に、しばし悪戯心を刺激され、法雨は目を細めて笑む。
「ア~ラ。――じゃあ、頑張らないとねぇ? ――アンタみたいな“坊や”は、“頂かれる側”になっちゃう可能性も大いにありそうだ、か、ら」
「えぇ!? なんでっすか!?」




