Drop.014『 The HANGED MAN:U〈Ⅱ〉』【1】
“様子がおかしい雷さん”に関し、京が法雨に相談をもちかけた日の翌晩――。
「――姐さん! ――事件っす!!」
そんな台詞を挨拶代わりに来店した京は、瞬く間に入り口近くの客たちの視線をかき集めた。
― Drop.014『 The HANGED MAN〈Ⅱ〉』―
「アンタねぇ……。――お客様がいらっしゃるんだから、やかましいご来店はお断りよ」
先ほどやかましい登場をかました京は、即座に法雨につねりあげられた尾の根元をさすりながら、反省した様子で案内されたカウンター席に着席した。
その、店の一番奥――カウンター端の席に座った京は、反省しながらも、未だ落ち着けぬ様子で言った。
「す、すいません。――で、でも、――でもでも! 俺! ――居てもたってもいられなくて!! ――どうしてもコレを、姐さんに聞いてほしくて!!」
「もう、なんなのよ。落ち着かないわねぇ……」
そんな京に、法雨は溜め息をつきながら問うてやる。
「――で? 何を聞いてほしいって? ――あぁ、ついに恋人でも出来たのかしら?」
「――ッ!!!!!」
法雨が問うと、京は耳と尾をピンと立て、大きな反応を見せた――が、すぐに脱力すると、肩を落として言った。
「――それなら……どれだけ良かったか……。――はぁ……」
「あぁ、はいはい。違うのね。これは失礼いたしました」
そんな京に再び溜め息をつき謝罪すると、法雨は続けた。
「――で? ――聞いてほしい事って? ――早く話してちょーだい」
「はっ! そうそう! そうですよ! ――今日は俺の事よりそっちっす!!」
そうして、法雨が急かすと、勢いを取り戻した京は、そう言うなり座席を立つと、本題を紡ぎだす。
「――いや、聞いてくださいよ、姐さん! ――あのですね……。実は……、実は実は……」
そして、そう紡ぎだした京は、次に両手を広げると、
「――ついにっ! ――あのっ! ――あの雷さんにっ!!」
と続けるなり、大きく息を吸った。
そして、その場で勢いをつけて片脚を踏み込むと、
「――好きな人が出来たみたいなんすよっ!!」
と、言い放った。
そんな京の動作に効果音をつけるならば――、“ジャジャーン!”といったところである。
「………………」
それに対し法雨は、半目がちに沈黙を返した。
「えっ……」
京は、そんな法雨に動揺した様子で鳴いた。
だが、何を思ったか、京は、今度は言葉を発さず、再びの“ジャジャーン”をした。
すると、ついには店内に流れる心地よい音楽すらも冷たく感じるほどの空気となった中、持ち主に揺らされた京のネックレスだけがちゃりりと啼き、彼を慰めた。
「………………」
「いや……、嘘でしょ……」
その対応に、信じられないといった表情の京は、店内の注目を大いに集めながら言った。
だが、その晩の京はめげなかった。




