Drop.013『 The HANGED MAN:U〈Ⅰ〉』【4】
とは云え、そんな光景ももう見慣れたもので――、京率いる若オオカミたちが、法雨の店のスタッフたちと親しくなってゆく中、年齢が近い事もあってか、京と桔流も、口調や態度もすっかりと砕けきり、旧友同士のようなやり取りをする事も、今となっては珍しくないのであった。
そして、そのような事もあり、接客とは云えぬ応答をされても微塵も気にしていない様子の京は、やや身を乗り出すようにしながら、気怠げに首を傾げる桔流に切り出す。
「あんさ、あんさ、――今度合コ」
「え~、やだぁ~……」
しかし、その京の提案は、本題を紡ぎ終える前に、桔流によって却下された。
京はそれに、さらに身を乗り出し、両耳をぴんと立てると、その大ぶりな尾を振り回しながら抗議する。
「おい! まだ最後まで言ってねぇだろ! ――しかもなんで“やだ”なんだよ!」
そんな京に、桔流は、わざとらしく、うんざりしたような顔を作り言った。
「だってそれさ~、女の子も呼ぶ合コンだろ~? ――俺ぇ~、女の子の居る合コンとか出ちゃうとさ~、めっちゃくちゃモテちゃって~、男どもに逆恨みされっからさぁ~?」
京は次に、そうのたまう桔流に拳を握ると、瞳を大きく開いたまま言う。
「お、おぉ、お前……、――イケメンだからって、言っていい事と悪ぃ事があんだぞ……」
しかし、そんな京の様子を不思議がる様にした桔流は、涼しい顔で言った。
「なんだよ。――事実なんだからしょうがねぇだろ? ――それと、ついついモテちゃう俺がそんなに羨ましいなら~……、――お前もモテればいいじゃん」
「――ッ!! ――ッ!!」
京は、その――さらなる凄まじい追い打ちの破壊力に、ついには言葉を忘却してしまったらしく、瞳を大きく見開いたまま声にならない反論を返した。
そんな、坊やたちのじゃれあいがしばしば繰り広げられている間――、法雨は、それらに一切の目もくれず、しばらく別の事を考えていた。
(――……う~ん。――あの雷さんが、毎日のようにぼうっとしてしまうほどの事なんて、――なかなか思いつかないわねぇ……。――考えられるような大きな事としては、家族や大切な人に何かあった、とかだけれど……、――にしては、深刻さは足りない感じよねぇ……)
そして、未だに繰り広げられているらしい坊やたちの問答が、とうとう耳にも入らなくなった法雨は、雷を案じながらひとつ思う。
(――でも、もし本当に何か困っている事があるなら、京だけに任せておくのも心配だし……。――今度、雷さんがお店にいらした時も様子が変なら、アタシからも尋いてみようかしらね)
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