Drop.012『 The EMPEROR:U〈Ⅲ〉』【3】
その報告に、瞳の輝きを失わせた桔流が、“なぁんだ”――と言うのを待った法雨だったが、――待てど暮らせど、桔流の瞳からその輝きが失せる事はなかった。
それどころか、瞳をさらに爛々と煌めかせた桔流は、不意に一枚のパンフレットを取り出すと、その様子を訝しむ法雨に言った。
「いや……、――それは、まだ分からないですよ、法雨さん……」
「え?」
「これを……見てください……」
そんな桔流が取り出したパンフレットは、先ほどのものとは別の、“数日後”に開催されるらしい“医学会主催”の講演パンフレットであった。
そして、そこに“医学界の権威”として掲載された医師たちの写真の中には、オオカミ族の医師も居た。
そのオオカミ族の医師の姓は、――“円月”。
法雨は、その掲載内容に思わず動揺したが、あくまでも平静を装って言った。
「や、やぁね。よく見てみなさい。――顔が……、顔がちょっと違うじゃないの」
(――それに、雷さんは嘘をついているようには見えなかったもの。――だから、だからあの雷さんは、絶対に、――絶、対、に、――ただの、私立探偵なのよ)
しかし、そんな法雨の平常心を揺らがすかのように、法雨の脳内に、先ほど雷が紡いだ、とある言葉が蘇った。
――俺も、また数日内に別の講演はありますが
(――………………まさか、ね)
そんな――、桔流によって生じてしまった余計なやりとりの後――、胸の内でざわめきが大きくなるのを感じながらも、法雨は仕事に集中し、必死に自身の疑念を抑え込むことにした。
しかし――、どれだけ努力をしても自身のざわめきを抑えきる事ができなかった法雨は、結局、――今、再び、雷の前へとやってきていた。
そして、そんな法雨が恐る恐る問うと、寛大なる元王は、変わらずにこやかに教えてくれた。
「あぁ。それは、――うちの一番上の兄ですね。――兄弟揃って講演の時期が被るとは、――妙な偶然もあるもんですね」
しかし、対する法雨は、のほほんとする元王の前で沈黙し、ただただ目を丸くする事に徹した。
無論――、テーブルを整えるふりをして、二人の話を盗み聞きしていた桔流も、己の役目をすっかりと忘れ、その場で静止し、同じく目を丸くするに徹していた。
そして、目を丸くしたまま石と化してしまった法雨と桔流は、同時に思った。
(――恐るべし……――円月一族……)
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