Drop.012『 The EMPEROR:U〈Ⅲ〉』【2】
そして、法雨はそこで、王にそのような事を問うた理由として、桔流とした先ほどのやりとりを簡単に説明した。
すると、その一通りの話をお聞きになられた崇高なる王は、納得されたように笑むと、乙女に仰られた――。
「あぁ。なるほど。――そういう事でしたか。ははは。――そうか、そうか。――俺と同じ時期に、“アイツ”にも講演の仕事があったんですね」
「え? ――“アイツ”……?」
法雨は、君主の言葉を思わず復唱する。
すると、王は、変わらぬ笑顔で続けられた。
「はい。――兄弟の中でも特に似た顔同士なので、昔からよく間違われてきたんですが……。――その、俺にそっくりな警視正とやらは、俺の、弟です」
「お、弟……?」
「えぇ。そう。――俺と顔のよく似た、弟、です」
「おとう、と………………」
なんと、桔流がお見かけしたと云う、その王子様――否、王様には、大変そっくりな兄上がおられたらしい。
(――と云う事は、つまり、――雷さんは王様と兄弟ではあるけど、この人自身は王子様でも王様でもなかった、ってわけね……。――よ、良かったわ……)
「そう、だったんですね……」
「えぇ」
その言葉に、法雨が心の内で安堵の溜め息をついていると、雷は笑顔で続けた。
「――俺が警察機関に居たのは、数年前までですから」
「あぁ、そ……、――えぇ!?」
一度整ったはずの情報に、一部訂正がかけられると、法雨は思わず声をあげた。
――で、あれば、この雷はやはり、ただ王様の兄弟であるというだけではない――、この男も、確かに王であった過去をもつ、王族であったのだ。
(――そ、それってつまり、――この人の家が、お偉いサマの家系って事なんじゃ……)
「まぁ、でも、安心してください。――アイツは確かに警視正ですが、俺は、ただの探偵ですので。――階級的な事を心配されているかもしれませんが、うちが家系的に警察関係の家柄という事でもないですから、変に心配されなくても大丈夫ですよ。――俺も、また数日内に別の講演はありますが、――嘘偽りなく、“俺は”、ただの探偵です」
「な、なるほど……。――そう、なんですね……」
その中、先の法雨の問いと緊張は、自身の無礼も相まっての事――と察してか、雷は、安心させるように笑むと、
「そんなに深刻にならなくても大丈夫ですから、どうぞご安心を」
と、穏やかに言った。
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法雨は、それからまたしばしの間、雷に緊張を解してもらいながら平常心を取り戻すと――、すっかりと長話に付き合わせてしまった事を丁寧に詫び、改めての礼を告げ、そのまま店のバックヤードへと戻った。
すると、その入り口付近には、何やらそわついた様子の桔流が居た。
そうして、まるで飼い主の帰りを待っていた忠犬の様な長身のユキヒョウは、法雨に期待の眼差しを向け、“結果報告”を求めた。
そんな、大きな忠“豹”に、法雨は、脱力しながらご褒美をやる。
「残念だったわね。桔流君。――あの人は、正真正銘の“私立探偵サン”。――王子様でも王様でもないわ」




