Drop.011『 The EMPEROR:U〈Ⅱ〉』【3】
「そうですか。――それは良かった。――安心しました」
法雨は、その雷の笑顔と言葉、そしてその声に、胸が満たされるのを感じながらまたひとつ笑みを返すと、次いで、姿勢を正し、静かに頭を下げた。
「あの、雷さん。――改めてになりますけれど、――その節は、大変ご心配をおかけしました。――それと、その……」
雷は、そうして頭を下げる法雨に、とんでもない――とでも云うようにしてその身を向けたが、何かを言いたげに言葉を切った法雨の様子から、言葉の続きを待つ事にしたのか、伺うような表情でしばし黙した。
そんな雷に見守られながら、法雨は紡ぐ。
「――この間は、酷く失礼な態度をとってしまい、――大変申し訳ありませんでした……」
「え……?」
法雨と京たちが、共に救われるきっかけとなったあの日以来――、法雨は、あの日の雷に働いた様々な無礼と、その厚意を無下にした事を、ただただ謝りたくていた。
だからこそ――、どんなに酷い事を言われようとも構わないと覚悟した上で、雷に謝罪をした――のだが、――当の雷はと云えば、その謝罪を受けると、酷く不思議そうにして首を傾げた。
法雨は、そんな雷の様子にしばし驚きながらも、ふと、菖蒲の言葉を思い出す。
(確かに、“そんな事なかった”わね……。――お叱りや嫌味を言うどころか、不思議そうにするなんて、覚えてもないのかしら……。――ほんと、どこまで“善いオオカミ”なのかしらね。――この人は……)
そして、どうやら菖蒲の直感通りの人柄あったらしい雷にひとつ苦笑すると、法雨は続けた。
「あの日。――見ず知らずの身ですのに、助けて頂いた上、沢山のお気遣いまで頂いたのに、アタシったらあんな物言いをしてしまったので……。――ずっと、その事をお詫びしたかったんです……。――それと、助けて頂いたお礼も……。――本当に、今更ですけれど……、――あの時は、助けに来てくださって、本当に有難うございました」
そんな法雨が、再び頭を下げると、雷はやっと法雨の意を理解したのか、穏やかに苦笑した。
「そういう事でしたか。――その事でしたら、詫びも礼も要りませんよ。――あれは、俺が勝手にやった事ですから。――あぁ、それよりも」
「――?」
その中、しばし真剣な面持ちとなった雷に、法雨が不思議そうにすると、雷は声を小さくして続けた。
「あれから、トラウマになっていたりとか、あるいは、――俺を前にしても、特に不安を感じるような事も、ないでしょうか……」
「え? ――えぇ。そうですね。――トラウマになったりはもちろんですけど、――雷さんを前に、不安になる様な事もありませんわ」
法雨は、それに応じつつも、首を傾げた。
そんな法雨の返答に、雷は再び安堵した様子で言った。




