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運命に惑うケモミミBL長編♂愛情深ハイスペ狼×恋歴難美人オネェ猫『ロドンのキセキ◆翠玉のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』連載中  作者: 偲 醇壱
◆ The MOON:U ◆

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Drop.009『 The MOON:U〈Ⅲ〉』【1】

 

 

 

「――ちょっと、アンタね……」

 どちらが先に幸せになるべきか――。

 その、ひとしきりの問答が落ち着くと――、菖蒲(あやめ)法雨(みのり)は、続いて、しばしばかり互いに融け合うひと時を過ごした。

 そんな彼らの火照ったその身とは逆に、(から)になったティーカップたちはすっかりと冷え込んでいる。

 その中、同じく冷え込んだ声色で文句を紡いだ法雨に、菖蒲はふにゃりと笑った。

「えへへ……」

 

 

 ― Drop.009『 The MOON:U〈Ⅲ〉』―

 

 

 汗ばんだ肌を感じ合いながらソファでまどろむ中、(たしな)められたにも関わらず満足そうに笑う菖蒲を、法雨はぺしりと叩き、大きな溜め息をついた。

「まったく……“えへへ”じゃないわよ……。――何度も言ってるけど、アタシはアンタと違ってマゾじゃないんだから、寸止めなんてヤメてちょうだい……」

「へへへ~……可愛くてつい~……。――でも()かったでしょ~?」

「悦くないから言ってんのよ」

「え~? ほんと~?」

「ほんとよ。――もう二度としないで」

「しょうがないなぁ……。――………………。――あぁ、でもそうだね。うん。――まぁ、もう“二度とできない”かもしれないし、――心配しなくても大丈夫だよ」

「え?」

「――………………。――ねぇ、法雨……。――その、“雷さん”ってさ……、――カッコよかったんでしょ?」

 ゆるりと尾を揺らすと、菖蒲はぽつりと零す。

 法雨は、その問いの意図が分からず、それに眉根を寄せると、疑問の意を返す。

「え、“雷さん”? ――ちょっと、何よ……。――なんで突然、雷さんの話になるのよ……」

 そんな法雨に、菖蒲は微かに顔を(ほころ)ばせて紡ぐ。

「いやぁ~……、俺としてはぁ~、――やっぱ、その二人の出逢いにも運命的な予感をじんわ~り感じててさぁ~」

「はぁ? ――ちょっとヤダ。――変なコト言わないでちょうだいよ。やぁね」

「えぇ~? なんで~? ――俺はイイと思うんだけどなぁ」

「イヤよ。――それに、前にも言ったでしょ? ――もうオオカミは御免なの。――雷さんが例え“善いオオカミ”だったとしても、オオカミと恋愛なんて、それこそ、二度としたくないわ」

 不意に妙な事を言われ、法雨は図らずも己の鼓動が乱れるのを感じる。

(まったく。――何を言い出すかと思えばこの子は……。――オオカミと恋愛なんて、例え、あの雷さん相手だったとしても、どうせろくなことにならないんだから……。――勘弁してほしいわ……)

 もちろん、雷が、――酷く優しく、酷く誠実なオオカミである事は、法雨も痛いほど理解している。

 だが――、だからこそ、法雨は、そんな彼の深い優しさにこれ以上触れたくなかった。

(それに、一度でもあの優しさに浸かってしまったら……、また、あの“くだらない憧れ”まで、抱き始めちゃうかもしれないもの……)

 そして、そんな事を思いながら、法雨はふと、雷と交わした“とあるやりとり”を思い出し、静かに笑むようにして言った。

「あぁ、それとね、――そんなのきっと、あっちから願い下げだわ」

「え? なんで?」

 その予想外の言葉に、菖蒲が顔を上げ、首を傾げると、法雨はソファに身を預け、やんわりと瞳を閉じて続ける。

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