Drop.008『 The MOON:U〈Ⅱ〉』【3】
そして、学生時代からすでに身体の関係もあったが、互いに“関係性の不変”を求める気持ちが一致し、一線を越えた後も、二人は友愛関係であり続けてきた。
今――、この瞬間も――。
そして、そんな二人には、ある時期から互いに想い合っている事があった。
「――まぁ、でもさ……、――俺は、――法雨が幸せになってくれるの、待ってるから」
そう言って微笑む菖蒲に、法雨も首を傾げるようにして微笑み返すと、言った。
「ふふ。いつも言ってるけど、――それはコッチのセリフだわ。――アナタは、アタシと違って“ちゃんとした恋愛”、出来るでしょ? ――だから、アナタが先に幸せになってちょうだい。――そしたら、アタシもアナタを参考に頑張ってみるわ」
そんな法雨に楽しげに笑うと、菖蒲は言った。
「あはは。それは駄目だよ~。――俺は~、法雨が幸せになってくれないと~、だ~れも好きになれないからね~」
法雨は、それに、おかしそうにして笑う。
「もう、何よそれ。――そんな事言ってると、いつまでも幸せになれないわよ? ――アナタは普通に恋する事も出来るんだから、アナタが先の方がお手本も見られて、アタシも早く幸せになれるかもしれないわよ?」
その法雨の言葉にひとつ唸ると、菖蒲はまた紡ぐ。
「う~ん。――まぁ、恋をする事は出来るよ~? ――でも~、だからこそ、――俺は法雨の幸せを見届けてからがいいの」
法雨は、それに溜め息をついて苦笑する。
「もう、――相変わらず強情ねぇ」
「アハハ。――それも、お互いサマ~」
「はぁ。――まったくね……」
唯一無二の――、絶対に失いたくない――、愛しき友。
そうであるからこそ、この関係が不変のまま続く事を、互いに望んでいた。
だが、だからといって、親愛なる友の人生までを独占したいわけではないし、大切にしてもらえる人となら、一日でも早く幸せにもなってほしい。
その、心からの互いへの願いは、共に強く、この先も変わらない。
だからこそ、菖蒲は、己の直感が強く感じさせる、法雨の運命の出逢いの予感に――、ついに訪れるかもしれない愛する友の夜明けの兆しに――、大きな期待を寄せずにはいられなかったのだ。
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