Drop.008『 The MOON:U〈Ⅱ〉』【1】
「――いい? 法雨。――法雨が彼らを受け入れて、法雨のトコに引き留めておいてくれたから、彼らは雷さんっていう救世主に出逢えたんだ。――法雨は、自分の手だけでは、彼らを完全に救う事が出来なかったかもしれない。――でも、彼らを救うために絶対的に必要だった選択肢を、法雨はちゃんと選べたんだ。――だから、今の彼らの安泰があるのは、法雨のおかげでもある。――俺はね、そう思うよ」
「………………」
「全ての運命はね、数多くのきっかけと選択を経て受け取れるモノなんだ。――そして、彼らが今に至るために、“雷さんの手助けを受ける”という選択肢を得るには、まずは法雨が、“何か月もの間、彼らを受け入れ続ける”という選択をしてくれる必要があった可能性は高い、とも思う。――だからね、雷さんだけじゃなく、法雨も確かに、彼らの救い手の一人であった事に、変わりないんだよ」
「――“救い手の一人”……。――じゃあ、アタシも、ちゃんとあの子たちのためになれてたって事……?」
「そうだよ。――絶対にね」
― Drop.008『 The MOON:U〈Ⅱ〉』―
菖蒲の言葉に、またしばし考える様にしている法雨に、菖蒲はさらに紡ぐ。
「――もちろん、法雨が受け入れない選択肢をとった場合だって、何かしらの条件が整えば、別の形で彼らは安泰を獲得できたとは思うよ? ――運命の道筋なんて無限大にあるわけだから、その無限の運命に関わる選択肢がさらに莫大な数になるのは、必然だからね。 ――だから、例えば、雷さん抜きで、法雨が彼らの事情を察して救いの手を差し伸べていたら、また違った流れを辿って彼らを救えていたかもしれない。――でもね、それも、それ以外も全部、“かもしれない”でしかない。――“そうしなかったらどうなったか”なんて事は、残念ながら教えてもらえないんだ。――だからね、“結果的に”良い運命を受け取れたのなら、その過程で選んだ自分の選択は、すべて“それで正解だった”って事なのさ」
そんな菖蒲の助言を踏まえ、法雨はひとつ想像してみる。
もし、初めて京たちに声をかけられた時に、京の言葉にすぐに応じず、雷のように、法雨も彼らの事情を察しようとしていたら――。
(――………………、駄目ね……)
法雨は、先ほど菖蒲に言われたような流れで、自身が京たちを救う運命を想像してみたのだが――、どれだけ様々なパターンを想像してみても、法雨が望む結果には至れなかった。
法雨は、どのような流れを想像してみても、あの状況下では、そもそも、彼らの事情を察する事すら出来なかったのだ。
「――どう? ――やっぱり、雷さんっていうきっかけを抜いて、法雨があのコらを助けるのは、結構難しそうじゃない?」
「えぇ……。そのようだわ……」
そう言い、法雨が諦めたような溜め息をつくと、菖蒲は苦笑して言った。




