Drop.007『 The MOON:U〈Ⅰ〉』【3】
「あはは。――法雨ってば、ほんっと、お世話好きだよねぇ」
「だって、本当にそうなんだもの。――アタシが止めてさえいれば、あんな事にはならなかったのよ?」
「う~ん……どうかなぁ……?」
菖蒲は、考え事をするかのように、中空を眺めながら紡ぐ。
「――多分だけど……、――その時に法雨が受け入れてなかったら、オオカミちゃんたち、また別の機会で同じ事したと思うよ。――だって、法雨の時も、法雨に誘われたわけでもないのに耐えられなくなったから、法雨に声かけたわけでしょ? ――だから、法雨で上手くいかなくても、その先で法雨みたいに優しい美人見つけたら、どっちみち耐えられなくなって、同じように声かけたと思うもん」
「そうかしら……」
「そうだよ。――それに、結果論的に云えば、法雨の選択は、ちゃんとそのコらを救う事に繋がったでしょ?」
そんな菖蒲の論に、法雨は不思議そうにしたので、それに応じるようにして菖蒲は続ける。
「――だってさぁ、もし、法雨がそこで抵抗したり、拒否して、そのコたちがそれで諦めて帰っちゃったりしてたら、法雨のお店にも二度と来なかったかもしれないわけでしょ? ――でも、もしそうなってたら、その先で、法雨みたいな――警察にも言わずに、全部一人で受け止めてくれる聖母みたいな人にでも出逢えない限り、彼らは本当にただの犯罪者になっちゃってたかもしれない。――だから、声をかけられた時、あくまで“合意”として相手してくれる法雨が受け入れたからこそ、今の安泰があるも同然なんだよ」
「でも、それは……」
それは偶然で、運良くそうなってくれただけで――、不幸中の幸いに過ぎない事だ――。
法雨は、そう紡ごうとした。
だが、それは、法雨の唇にぺしりと添えられた茶請けのビスケットによって封じられた。
「そぉれぇとぉ、ね?」
「……?」
そして、ビスケットで言葉を封じられたまま不思議そうにする法雨に、菖蒲は、言い聞かせるようにして続けた。
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