【New】LastDrop ✦ Drop.031『 The WORLD:U 』【4】
「まったくもう……」
その上機嫌な後ろ姿を見届けながら、法雨は溜め息を零す。
そんな法雨の傍ら、同じく菖蒲の後ろ姿を見送っていた雷は、寄り添う様にして言う。
「菖蒲さんも……、――早く運命の人と出逢えると良いね」
それに嬉しそうに笑むと、法雨は、雷にその身を寄せる様にして言う。
「えぇ。本当に……」
そして、その――最愛の運命の人の存在を確かに感じながら、庭園で談笑する愛しき人々をゆっくりと見回した法雨は、続けて、その幸せに満ち溢れた声で、喜びを紡ぐ。
「本当に……、夢のよう……。――雷さんのおかげで、アタシ、何から何まで、幸せでいっぱい……」
その愛おしい想いに、雷もまた穏やかに笑んでは、そっと法雨の肩を抱くようにすると、その酷く優しい声で、愛を贈った。
「そう言ってもらえて、俺も本当に幸せだよ」
法雨は、そんな雷に愛を込め、最幸の笑みを贈る。
「雷さん。この先も、どうか末永く、雷さんのお傍に居させてね……。――心から、――愛してるわ」
雷は、その美しい微笑みに、幾度目かも分からぬ恋に再びと落ちると――、そんな最愛の彼へ、心からの愛を紡ぐ。
「こちらこそ。――この先もどうか、末永く、俺の傍に居てほしい……。――俺も、心から愛しているよ……。――法雨さん」
彼は――、運命の人との出逢いに、酷く憧れていました。
そんな彼は、ある日から――、オオカミの王子様と結ばれる幸福を、夢見るようになったのです。
それゆえに彼は――、その運命のオオカミと巡り逢うべく、沢山のオオカミと、沢山の恋をしたのでした。
しかし、その美しい彼に目を付けたのは、酷く欲深いオオカミたちでした。
その悪いオオカミたちは、美しい彼の純粋さを知ると、純粋な彼を騙しては、彼の大好きだったオオカミが、大嫌いになるまで、欲望のまま、彼の心を酷く傷つけ続けました。
そうして、そんな彼の心が、だんだんと暗く冷たい闇に囚われてゆくと――、彼は、ついに、大切に抱き続けたオオカミの王子様への憧れにも、蓋をしてしまったのでした。
しかし――、とある日の朝。
そんな彼の前に、突如として、強くも優しい、勇敢なオオカミが現れました。
その優しいオオカミは、そうして現れると、暗闇に囚われた彼を救うべく、すぐさまその大きな手を差し伸べます。
ですが、とっくの昔にオオカミが大嫌いになっていた彼は、その手を取る代わりに、酷く冷たい言葉を放つと、その優しいオオカミを追い返そうとしました。
しかし――、そのオオカミは、それでも彼を救おうと、優しく手を差し伸べ続けます。
どうしてそんなに優しくするんだろう――。
すると、そんな彼は、どれだけ冷たく追い返そうとしても、優しく手を差し伸べ続けてくるそのオオカミの事を、次第に不思議に思うようになってゆきました。
それゆえに彼は、意を決して、そのオオカミに尋ねてみる事にしました。
どうして、そんなにも優しくするのですか――。
しかし、その理由は、その優しいオオカミにすらも、分からないようでした。
ですが、どうしても、この心が、あなたを放ってはおけないのです――。
そんなオオカミの言葉に、ついに彼は警戒に凍った心をすっかりと融かしてしまうと、自分でも理由が分からないのに、必死に彼を助けようとしているオオカミがおかしくて、ふふと美しく笑いました。
そして、それからようやっと、その優しいオオカミの手を取った彼は、その日を境に、暗闇の世界から、美しい光の世界へと、戻る事が出来たのでした。
しかし――、それからしばらくと月日が過ぎても、オオカミが彼を放っておけなかった理由だけは、彼も、優しいオオカミも、分からぬままでした。
ですが、それもそのはずです。
何せ、彼らは――、二人が初めて出逢った瞬間に起こった、とてもとても大切な事に気付けぬまま、その出逢いを終えてしまったのですから。
彼らは共に――、そうして出逢った、その瞬間に――、最幸の恋に落ち逢っていたというのに――。
Fin.
旦 Thank you for your time... 旦
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