Drop.004『 The HIEROPHANT:U〈Ⅰ〉』【3】
だが、法雨はそれにも動じず、呆れたように笑うと、冷淡に言った。
「――“確認”? ――そんなのしたって無駄じゃないかしら。 ――どうせ、口封じ済みでしょう? ――アタシにしたみたいに」
その法雨の言葉は彼をさらに刺激したらしく、動揺する仲間たちに構わず、彼はまた怒鳴るようにして訴える。
「――んだよ! マジで何もしてねぇよ!! ――アンタなら、話さえすりゃ嘘つかされてるかどうかも分かるだろ!! ――信じろよ!!」
法雨はまたひとつ、呆れたように笑うと、腰に手を当てて応じる。
「――信じる? どうやって? ――信じて貰えるような人徳がアナタたちにあるとでも思って?」
「――っ、――それは……」
法雨の紡いだ真実に、彼は苦しげな表情で押し黙る。
そして、その場にはしばしの沈黙が訪れたが――、彼のそばに居た一人の青年が、小声でその沈黙を払った。
「――な、なぁ、京……。――やっぱさ、ちゃんと言おうぜ……。――店長サンの言う通りさ、俺らがいくら言っても信じて貰えるわけないって……。――何もしないだけじゃ、やっぱ無理だよ……。――だから、分かってもらえないかもしんないけど……、やっぱ、ほんとの事、話しちゃった方が……」
「でもよ……」
どうやら、“京”という名であるらしい灰色の彼は、控えめに紡がれた仲間の言葉に迷うように応じる。
そんな彼らを訝しみ、法雨はさらに鋭い視線で見つめ、追い立てるようにした。
すると、それに耐えきれなくなったのか、また別の青年が、縋る様にして法雨に言った。
「――あ、あの! ――俺たち、その……、――こないだ、あの人に」
「――おい、馬鹿っ! ――それは言うなって言われただろ!」
「――えっ……、あ……」
そんな仲間の発言は、何やらまずい内容だったのか、京はその青年を窘めるようにした。
だが、今の法雨に、その“まずい内容”を見逃してやる優しさは残されていなかった。
「――何? もう遅いわよ。――誰に口止めされてるのか知らないけど、アナタたちの約束事なんて知った事じゃないわ。――洗いざらい全部話してちょうだい。――それができないなら……、――これまでの事をすべて警察に報告するわ」
「――っ……、………………、――……分かったよ」
京は、そんな法雨の言葉に射られると、しぶしぶと承諾の意を示した。
「――よろしい。――じゃあ、そうねぇ、――とりあえず、今からアナタたちがお気に入りだったあの倉庫に行っておいてちょうだい。話はそこで聞くわ。――アタシは一度お店に戻ってから向かうから、アナタたちはアタシが行くまで、そこで大人しく待ってなさい。いいわね。――もし逃げたら……、――その時は承知しないわよ」
「――わ、分かってるよ!」
そして、京が気圧されながら応じると、つい数か月前まで威勢だけは良かったオオカミたちは、揃って叱られた子供のように尾と耳を垂れさせ、そのまま、馴染みのあるであろう倉庫へと歩き出した。
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