短編-5 確信
第五章-6 解ける、の翌朝です。
――議会の翌朝。
目を覚ましたのは、いつもより少し早い時間だった。
重い天蓋越しに差し込む朝の光が、淡く揺れている。
その静けさの中で、ルークは息を殺したまま、腕の中の温もりを確かめた。
アリーシャは、まだ眠っている。
長い睫毛が頬に影を落とし、呼吸は穏やかだ。
昨夜の張りつめていた気配はすっかり消え、今はただ、安らいだ寝顔だけがそこにあった。
(……こんな顔をするようになったんだな)
初めて会った日のことを思い出す。
回廊ですれ違った、伏せがちな横顔。
皇女として完璧に整えられた佇まいの奥に、押し殺された息苦しさを感じた。
彼女は、誰かに守られているようで、実のところ、孤独なようだった。
議会の後で、カインの視線に震えながら、それでも逃げずに言葉を選び、震えながらも立ち続けた姿。
(……強くなった、というより)
選んだのだ。
守られるだけの立場ではなく、自分の意志で、隣に立つことを。
ルークは、無意識のうちにアリーシャの髪に指を通しかけ、途中で止めた。
起こしてしまうのが惜しかった。
(俺は……)
ようやく、はっきりと自覚する。
これは、責任じゃない。
王配としての覚悟でもない。
この国のため、という大義名分の奥に、
確かに一人の女性への想いがある。
彼女が迷うことも、疑うことも、怖れることも、すべて含めて、そばにいたいと思っている。
(……愛、なんだろうな)
言葉にした瞬間、不思議と胸が静かになった。
アリーシャが、わずかに身じろぎする。
目覚めたとき、彼女がまた迷っていたとしても構わない。
もう、揺らがないと決めている。




