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短編-4 晩餐の緊張の後で
国葬の翌日、倒れたアリーシャを見舞いに行った後のルークの独り言です。
扉を閉めると、廊下は驚くほど静かだった。
先ほどまで、あの部屋に満ちていた気配が嘘のように、音がない。
ルークは一度だけ立ち止まり、深く息を吐いた。
(……倒れるまで、気丈でいようとしたか)
あの細い身体に、どれほどの重圧を背負わせてしまったのか。
国葬や、その後の晩餐で受ける視線と評価。
妹であることも、悲しむことも、すべて後回しにして。
(それでも、逃げなかった)
それが誇らしく、同時に――痛ましかった。
拳を握る。
守ると決めたはずなのに、彼女は自分の足で立ち、限界まで奮い立ってしまった。
(……強いな)
だが、その強さを、当然のものとしてはいけない。
彼女は、皇妃である前に、18歳の少女だ。
歩き出しながら、心の中で静かに誓う。
(次は、倒れる前に支えよう)
無理をしているなら、止める役目を引き受ける。
それが、王配としてでも、補佐としてでもなく――
(夫としての自分の役目だ)
廊下の先で、宰相と合流する気配を感じる。
また忙しい一日が始まる。
それでも。
彼の足取りは、先ほどよりも、わずかに軽かった。
――今日は、早めに戻ると約束したのだから。




