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第七章-1 奔走する

 夜明け前、視察先の仮営地は静まり返っていた。

ルークは、地図を広げたまま椅子に腰掛けていた。

サムロール領――街道、防衛、徴税。

頭は冴えていたが、胸の奥に、言いようのない違和感が残っている。

その時、外で馬のいななきが響いた。


「――王配殿下!」


 駆け込んできた伝令の顔を見た瞬間、ルークは、嫌な予感を確信に変えた。


「どうした」


「王城より、急報です。

王妃殿下と、侍女アンナが――行方不明に」


 一瞬、音が消えた。


「……いつからだ」


「夜半。

庭園で、王妃殿下の肩掛けと負傷した護衛が発見されています」


 ルークは、立ち上がった。

取り乱さなかった。ただ、短く命じる。


「馬を用意しろ。

夜が明ける前に戻る」


 剣を取り、外套を掴む。


(……無事でいてくれ!)





王城の庭は、騒然としていた。

近衛兵が走り、灯りが増え、静寂は完全に失われている。

ネリーは、急ぎ近衛兵へと捜索の依頼、ルークへの伝令、宰相への報告を行なった。

負傷し意識を失っていたエリアスは救護室へと運ばれていった。

ネリー自身が主だって動けることなど多くない。

ディートは席を外した自分を責めてはいたが、今は捜索に当たってくれている。

ネリーは肩掛けを握りしめたまま、噴水の前に立っていた。


(あの時…)


 問いただすべきだった。

 止めるべきだった。

 だが、泣き言は言っていられない。

ルークが戻れば、きっとすぐにアリーシャを救い出してくれるだろう。

そう希望を繋いでいた。





 馬で駆ける一団が夜道を走っていた。

灯りはなく、外の景色はほとんど見えない。

アンナは、前を走るカインと、その腕に抱かれ眠っているアリーシャを見つめていた。

視線を落とすと、指が震えているのがわかる。

アンナを抱えて走る男――カインの側近がアンナに声をかける。


「変な気は起こすなよ。殿下のためだ」


 その言葉に、アンナは歯を食いしばった。

(違う……)

 こんなことが姫様のためな訳ない。

かすれた声で尋ねる。


「……なぜ、わたしも」


男が答える。


「口止めと、……あなたには姫の世話をしてもらうためだ」


 アンナは、唇を噛みしめた。

自分は “使える”と判断されたのだ。

月明かりの下、馬車は進む。

王城から遠ざかり、戻れない距離へ。


(……私のやって来たことは間違いだったの?)


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