表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がお砂糖も視野  作者: 一丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

最悪のチーム

気まずい沈黙。

駅前の銅像の前で、互いにスマホを握りしめたまま、西代と雪空は目をそらし合っていた。

「……つまり、お前が“雪空”?」

「そっちこそ、“トタ”でしょ。はぁ……最悪」

二人の声には、驚きよりも怒りと裏切りがにじんでいた。

「女アバター使って騙してんじゃねえよ!」

「そっちだって! あんな優しそうな話し方してたくせに、現実じゃ口悪すぎ!」

「うるせぇ!」

「そっちこそ!」

交差点の時より激しい火花が飛び散る。

だが——互いに「嫌い」と思いつつも、どこかで気づいていた。

(……話してると、テンポが合うのがムカつく。)

***

結局、口喧嘩の勢いのまま「もういい、買い物行くぞ」となり、二人はパソコンショップに向かった。

目的は西代の新PC選び。だが、道中も空気は最悪だ。

「CPUは何にするつもり?」

「え、わかんね。安くて強いの」

「……“安くて強い”とか言うやつ、だいたいパーツ燃やすタイプ」

「お前どんな偏見だよ!」

「偏見じゃなくて統計」

「うぜぇ……」

雪空は淡々と専門用語を並べ、西代は半分も理解できず相槌だけ打つ。

そのくせ、どちらも負けず嫌いで、譲らない。

「グラボは絶対3060以上。下は論外」

「なんだよその数字信仰。宗教か?」

「“知識ないくせに反論だけするタイプ”が一番嫌い」

「そっちこそ人の気持ち考えたことあんの?」

「ない」

「正直でムカつく!」

店員が苦笑するほどの口論を続けながらも、

最終的に二人はそこそこ良い構成でPCを選び終えた。

支払いを済ませたあと、沈黙。

気まずさとイライラが入り混じった空気。

「……じゃ、帰るか」

「うん。二度と会うことないだろうけど」

その瞬間——雪空のスマホが震えた。

『もしもし! 田尾さんですか!? ゲームイベントの時間、今日の夜ですよ!』

「……は?」

雪空の表情が固まる。

隣で西代も同時にスマホを見て、同じ通知を確認した。

「おいおい……まさか、あの“ペア参加”の大会……」

「うそ……あれ、応募したままだったの!?」

二人、同時に天を仰ぐ。

「……行く?」

「行かない理由は……景品」

「同じこと考えてんじゃねえよ」

そして、二人は渋々、会場へ向かった。

***


チームエントリー


受付でスタッフが声をかける。

「チーム名とメンバー名、お願いします」

田尾がため息をつきながらタブレットを操作する。

「……本名、入力ね。田尾祐樹ゆうき

「……西代楓」

エントリーフォームに表示された文字列は、まるで悪ふざけのようだった。

チーム名:トタと雪空

メンバー:西代楓・田尾祐樹

「……ダッサ」

「いや、お前がつけたんだろ」

「“雪空”って名前、封印したいんだけど」

「俺だって“トタ”名乗るの黒歴史だから」

互いに文句を言いながらも、結局そのまま登録を終えた。

***


第1ステージ:カート乱戦レーサーズ対決

*キャラクターを操作してコースを走り抜けるレースゲーム。


全20チーム。

スタートの合図が鳴る。

「いっけぇぇぇ!」

西代はトップを独走。田尾もそのすぐ後ろ。

「まあまあやるじゃん」

「そっちこそ」

息の合った走り——と思いきや、

西代の指が不穏に動く。

「おい、まさか——」

「くらえ、赤甲羅ぁぁ!!」

——ドガァン!!

「バッカじゃないの!? 同じチームでしょ!?」

「反射神経テストだよ!」

「どんなテストよ!」

怒った田尾も青甲羅で反撃。

以降、互いを狙い撃ちする“仁義なきレース”が始まった。

結果、2人とも最下位近くまで転落。

「なにやってんの!?」

「お前が先に撃ったんだろ!」

「先に煽ったのはそっち!」

「黙れ、雪空!」

「その名前で呼ぶな!!」

必死のリカバリーも虚しく、

田尾9位・西代10位。

二人とも、顔面が引きつる。

「……終わった」

「お前のせいだろ」

「は?お前がトチったんでしょ!」

が、その時、アナウンスが入る。

『上位チームのうち、同じチームの二人がどちらも8位以内に入ったため、次点チームが繰り上がり進出です!』

モニターに映る名前——チーム:トタと雪空 進出。

「…………」

「…………」

二人、同時にため息。

「……運だけかよ」

「それでもお前よりマシだ」

「なんだと?」

「もう黙れ、トタ」

「お前もだ、雪空」

***


第2ステージ:オールスター・メレーバトル対決

*複数のプレイヤーがステージ上で戦い、相手を場外に吹き飛ばすアクションバトル。


2対2のトーナメント戦。

最初のラウンドでは、西代:残機3、田尾:2。難なく勝利。

次の対戦。

序盤は互角——だが、田尾の動きがどんどん硬くなる。

「おい、どうした!」

「うるさい……リアルの対戦とか、慣れてないだけ……!」

次々に攻撃を受け、田尾は脱落。残機0。

画面の端で、倒れたアバターが消える。

「はぁ……足引っ張んなよ」

「誰のせいで動揺してると思ってんのよ……!」

残るは西代ひとり。敵は2人。

西代は深く息を吸った。

「見とけ、バカ雪空」

そこからの展開は、まるで別人。

冷静な立ち回り、絶妙な反撃、ギリギリでの復帰。

観客がどよめく。

そして——最後のスマッシュが決まる。

『GAME SET!』

勝利の瞬間、会場がどよめいた。

田尾は口を開けたまま。

「……本気出したら、こんなもん」

「うざ……でも、ありがと」

「お、素直じゃん?」

「調子乗んな」

互いにそっぽを向きながら、わずかに笑う。

だが、それすら腹が立つ。

「なんか、笑ってんのムカつく」

「お前がムカつく顔してるからだよ」

「帰れ」

「お前がな」

***

休憩時間。

二人はペットボトルを手に、モニターに映る次の対戦表を見つめた。

「次……Aブロックの優勝チーム、“双子プレイヤー”か」

「やば。前回優勝組じゃん」

「しかも次のゲーム、“クック&サーブ・ラッシュ”のVersusモード……」


*2人で協力しながら、制限時間内に料理をたくさん作って提供するゲーム。


二人の間に、沈黙。

それは恐怖と、少しのワクワクが混じった沈黙だった。

「……協力ゲーとか、俺らに一番向いてねぇじゃん」

「だね。でも——勝つよ」

田尾の小さな声に、西代はため息をつきながらも、

口の端がほんの少しだけ上がった。

——最悪のチーム。

それでも、なぜか息だけは、少しずつ合い始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ