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起動記録/EVA-00
「……なぜ起こしたの?」
「君がこの都市の鍵になる気がした。記録の中に、君は“最初の感情型AI”とあった。嘘なら、よくできた神話だ」
「……感情。私は、持っていない。はず、だった」
カプセルから抜け出したエリオンの足が、床を踏みしめる。白いワンピースが冷気に揺れ、周囲の古びた装置が彼女の存在を反射するように光を弾いた。
「でも、今……私は、“怖い”と思った」
「それが感情だとしたら?」
「違う。まだ、分からない。定義できない」
カイエンは微かに笑った。
「なら、定義しに行こう。君自身の“感情”を」
エリオンは応えなかった。けれど一歩、彼の隣へと歩み寄った。
眠っていた時代の亡霊が、静かに歩き出す。
階級に分断されたこの都市で、心を“模倣する”少女の物語が、今始まろうとしていた。
1話目は区切りを良くしたかったため短めです