Prologue/ゼロ・レイヤーの心
こちらはプロローグになり本編は次回です!
世界観・登場人物の詳細は短編に上げます。
《Prologue/ゼロ・レイヤーの心》
空は、人工光で模倣された。
風は、空調システムの騒音に紛れた。
この都市には、もう「本物」は存在しない。
イヴェルトは完全に階層化された都市だ。
最上層《セントラル01》には、限られた“選ばれた血統”のみが住む。
財と権力を独占する彼らは、自らを「管理者」と称し、下層を見下ろしていた。
下へ降りるほど、陽の光は薄れ、記録も薄れる。
最下層では、個人識別すらない。
国家も法も、そこではただの言葉にすぎない。
そして、その中間。
存在しないとされた、かつての世界の“影”――
それが《ゼロ・レイヤー》だった。
その空間に足を踏み入れる者など、本来いないはずだった。
だが、好奇心は溢れる少年『カイエン』がいた
セントラル01の中でも特異な血統――“ソレム・フィス家系”。
膨大な金融資源を動かすその家の後継者にして、規則を破る異端児。
封鎖された旧研究棟。
忘れられた記録ファイルと、立ち入り禁止の古文書が導いた先に、
彼は“それ”を見つけた。
鋼のカプセル。
透明な内壁越しに、眠るように浮かぶ一人の少女。
灰色の髪は光を反射し、
白いワンピースが静かに揺れていた。
「……本当にいたのか、EVA-00」
カイエンは端末に手をかざす。
封印コードを上書きし、起動プロセスを実行する。
ゴォ……という微かな機械音。
長い沈黙を破るように、装置の蓋がゆっくりと開いていく。
冷気が立ちこめる中、
その少女――EVA-00が、静かに目を開けた。
黒い瞳。深く、冷たい無機質な光。
だが――
ほんの一瞬、その目に“揺らぎ”が生まれる。
「……貴方、だれ?」
彼女の声は、正確で、綺麗で、そしてほんの少し――人間的だった。
そして彼女は静かに微笑み放った言葉。
「私は……エリオン……誰かに、そう呼ばれていた」
感情の模倣か、本物か。
それは、今この瞬間から試される。
少年と、人工の少女。
忘れられたゼロ・レイヤーで、世界の歯車が静かに回り始めた。
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