第94話: 各地の反応
養蜂プロジェクトの進展に伴い、リハルトを中心に巡る経済の血脈が徐々に形を成しつつあった。
フローリア村からベリル村を通り、リハルトに至る仮の街道整備がようやく完成し、それに伴う様々な影響が報告されるようになってきた。
ミツルたちは、リハルトの冒険者ギルドの会議室に集まっていた。
今後のロードマップを確認するため、ミツル、エルザ、アリーシャをはじめとするプロジェクトの中心人物と、ドラゴンテイルの面々が顔を揃えていた。
「どうやら、この仮の街道一本で随分物事が動き出したな。」ドラゴンテイルのエリオットが真剣な表情で地図を指し示した。
「確かに、この道ができてから、多くの情報が入ってくるようになった。」ミツルは頷き、テーブルに広げられた報告書に目を落とす。
バルドウィン卿は会議を進行しつつ、現状を確認していた。
「リハルトは貴族や商人、冒険者ギルドの中心地となりつつある。それが各地でどう影響を及ぼしているか、注目すべきところだ。」
会議室には、養蜂施設やミード製作所からの成果報告も次々と持ち込まれ、その中で孤児や元奴隷たちの教育と訓練の進捗状況も報告されていた。
「獣人たちや孤児たちが行き場所を見つけ、教育の場を通じて次第に自信をつけ始めているよ。」
エルザは希望に満ちた表情でデータを示し、各地での取り組みの歩調が一致していることを確認した。
「皆さんからの手助けもあって、新しい雇用媒体が生まれているのは嬉しい限りです。今の所教育や訓練の進捗は順調だと思います。」
アリーシャは、養蜂活動の重要性を強調し、そこから派生するメリットについて具体的に語った。
「蜂の活動で小麦や果物の栽培が促進され、十分な収穫が見込まれるようになってきています。これがまさに私たちが目指していた事が実現出来ていると言う事だと思います。」
アリーシャの言葉に皆が耳を傾ける。
午後の会議が進む中、各地で得られた最新の成果と今後の課題がテーブルに上がる。
街道整備により、人々の往来が活発化し、市場での取引も増えているという報告が続いていた。
「各地から報告を受ける中で、地域住民たちが変化に対してどう反応しているのか疑問だったが、全体としては肯定的で前向きだ。」
バルドウィン卿は報告を聞きつつ、状況の全体像を把握した。
一方で、冒険者としての活動はスキルアップが不可欠だった。
ミツルたちは次なる大きな目標であるクイーンティラワスプとの対峙に備えて準備を進めていた。
「エリオットさん達のサポートがあったおかげで、上手く進んでるけど、まだまだこれからだね。」
ミツルは自信を傾け、向上心に満ちた視線を送った。
会議の合間、ミツルはティグと共に、クイーンティラワスプをテイムするためのスキル向上をリアルタイムで考慮していた。
「クイーンティラワスプに挑むには、なんとかこちらのレベルを上げないと。でも、ティグも最近かなり腕を上げてきたね。」
ミツルはティグに話しかけながら、攻撃プランを練っていた。
「俺たちに期待されていることを胸に、もっと頑張らないといけませんね。早くみなさんのお荷物にならない様精進します！」
ティグは笑顔を見せ、互いに支え合うことでプロジェクトへの貢献を誓った。
その時、冒険者ギルドに所属する商人たちから、沖合から交易船が着くという知らせがもたらされた。
これは今後の物流と市場の拡大にとって大きなステップとなる予感を漂わせていた。
「どんな商品と情報が運ばれてくるのか、待ち遠しいな。」と、ミツルは期待を込めて仲間たちに微笑んだ。
冒険者ギルドから広がる新たな潮流。それが地域の抱える課題を解決し、住民たちの暮らしを潤す要因となることを、参加者全員が確信していた。
その場での会議は無事に終了したが、ミツルたちの活動はまだここからが本格的なものとなるのだった。次のステップで待つ新たな発展に向けて、彼らの物語は続いていく。
