第85話: 新たな雇用創出
フローリア村は、小さな村にもかかわらず、ミツルたちの養蜂プロジェクトによって大きな変化を遂げていた。
昨今の養蜂の成功により、村人たちの食糧事情も大いに改善されているのだ。
「養蜂が進んで、村の行商も活発になったと聞いてるよ。」エルザが村の市場を眺めながら言った。「ベリル村との取引もあって、ずいぶん生活が良くなったよ。」アリーシャもその変化を実感していた。
そこで村長のアーノルドは、村人たちが養蜂やミードの製作に興味を持ち、携わりたいと考える人が増えてきたことを話してくれた。
「今では、多くの人々がこの新しい仕事に関心を持っていますよ。」
「それはいいことだね。ベリル村でも似たような話を聞いたし、両村での協力体制をもっと強固にできるといいね。」ミツルもその状況を歓迎した。
ミツルたちは後日、ベリル村を訪問し、村長のエリックからも同じような話を聞いた。
ここでも養蜂やミードの需要が高まりつつあり、村人たちが進んで新しい仕事に取り組もうとしている様子が伝わってきた。
「フローリア村もベリル村も、このプロジェクトに積極的に参加して色々な協力をしてくれるなんて、想像以上だね。嬉しい限りだよ。」ミツルは笑顔で言った。
両村を行き来するミード製作隊の四人、リオナ、タリック、カミラ、そしてマリアは、すっかり村の人々から信頼され、彼らと一緒に養蜂やミードの技術を共有していた。
彼らの献身的な活動により、中間地点の養蜂場とミード製作所は、村人たちに任せて大丈夫だと判断された。
「これなら安心してリハルトに戻れるね。」エルザが一同を見渡しながら言う。
「うん、こうして現地の人たちが主体的に動いてくれるようになると、本当にありがたい。」ミツルも感謝の気持ちを隠さなかった。
そこで、ミツルたちは決断を下し、ミード製作隊の四人を連れてリハルトへと向かうことにした。
その目的は、養蜂やミード作りを教えられる人材をより多く育て、それぞれの村や都市でプロジェクトを推進できるようにすることだった。
到着したリハルトでは、さまざまな背景を持つ人々が集まっていた。
各地から避難してきた獣人や孤児、奴隷として囚われていた者たち、そしてケガや年齢で冒険者を引退した人々が、バルドウィン卿とアンドリューの指揮の下、新しい生活のチャンスを求めて集まっていた。
「これだけ多くの人たちが協力してくれるなんて、なんだか感動的だね。」アリーシャが感嘆の声を漏らす。
「みんながここリハルトで新しい出発を迎えられるように、しっかりサポートしたいね。」ミツルも、彼らの情熱に応えるべく、決意を新たにする。
ボリスとティルダ、そして協力してくれたドワーフの大工たちのおかげで、ここには最低限の建物が完成していた。
これから、この場所が新たな物流の拠点、そして人々の再出発の場として活気づくことを願っていた。
リハルトでの再開発は、これからのプロジェクトにおいて欠かせないものだ。
ミツルたちは、ここでの活動がより多くの人々にとっての希望となるよう邁進するつもりであり、そのための準備を入念に進めていくことにしていた。
ミツルは、新たに集まった人々に対して、今後の計画を丁寧に説明し、どうすれば自分たちがこのプロジェクトに貢献できるのかを分かりやすく伝えた。
彼の言葉に彼らは耳を傾け、それぞれの役割や責任を理解し、プロジェクトに対する期待と熱意をかき立てられた。
この共生社会への一歩が、未来を大きく変えていくことを彼らも深く感じ取っていた。
こうして、ミツルたちは一丸となり、新たな雇用創出と共に、未来を築くためのプロジェクトを一歩進めたのであった。
