第83話: リハルトを拠点に
ミツルたちは、朝焼けに輝くリハルトの街並みを見下ろしながら、これからの計画に思いを巡らせていた。
彼らはリハルトを「蜂蜜街道」の拠点、すなわち本部として設立するために、様々な関係者たちと交渉を続けていた。
リハルトは、豊かな自然と交通の要衝としての利便性を併せ持つ重要な場所だ。
そのため、ミツルたちはここを物流の中心地とし、効率的な運搬システムを実現するための基盤を築こうと考えていた。
「バルドウィン卿とアンドリューさんに本部の件をしっかり伝えないとね。」エルザが、少し緊張した面持ちでつぶやく。
「そうだな。これが成功すれば、街も活気づくし、みんなの生活がもっと楽になるはずだ。」ミツルは力強く頷いた。
彼らはリハルトの公邸に足を運び、バルドウィン卿とその側近であるアンドリューに面会した。
丁寧に計画書を手渡し、養蜂街道の拠点としてリハルトに本部を設けたい旨を真剣に説明する。
「これは素晴らしい計画だ。リハルトが拠点となることで、街全体に繁栄がもたらされるだろう。」バルドウィン卿は感心しながら、賛同の意を示した。
「物流の効率化によって、地域経済の発展にも寄与できると思います。
課題はたくさんありますが、心が躍りますね。」アンドリューも資料をめくりながら賛同する。
ミツルたちはさらに、パートナーとして協力してきた冒険者ギルドや商人ギルドのギルドマスターバルドックとオルガにも働きかけ、リハルトを交通のハブとするための構想を伝えた。
そして、物流ネットワーク構築のために必要な人員や資材を集める手はずを整える。
「ドラゴンテイルの協力も必要不可欠だ。フローリア村とベリル村の蜂蜜やミードを、ここリハルトに集約するために、新たな運搬部隊を編成してもらおう。」ミツルは配達担当の冒険者たちに話しかけた。
「了解だ、効率的な運搬ができるように、こっちでも調整しておくよ。久しぶりのフローリア村だから新鮮だよ。」ドラゴンテイルのリーダーエリオットは威勢よく応じた。
運搬ルートの整備も急務であるため、ミツルたちはフローリア村、ベリル村、そしてリハルト間を最優先に街道の整備と養蜂場、ミード製作所の建設を進めるため、ボリスたちに協力を求めることにした。
ボリスは先日話した通り、既に選定した一流のドワーフ大工と共に、工事の準備を整えていた。
彼らは各種資材を整え、正確無比な技術を駆使し、早速工事に取り掛かった。
「建設開始!各地から人や物が集まって、まるで大きな歯車が動き出すようだね。」ティルダは現場を見渡し、興奮を隠せない様子で、息を弾ませながら語った。
各都市を結ぶ蜂蜜街道の建設が進む中、リハルトには各地のギルドマスターたちから情報と資源が流れ込み始めていた。
バルドウィン卿のもとには、様々な形で支援を申し出る声が届き、高揚した空気が漂っていた。
「うちのギルドでも何か手伝えることがあれば積極的に参加するつもりです。」エドマンドも、商人としての才覚を活かし、協力を申し出てくれた。
多くの人員、資材が集い始め、彼らの描いていた計画が本格的に動き出そうとしている事実は、ミツルたちにとって大きな喜びだった。
エルザはふと、遠くを見るような目をして呟いた。
「こんな大きなことができるなんて、思わなかった。みんなが力を合わせれば、何でもできるんだね。」
「そうさ、これが俺たちの願っていたことだ。どんな困難があっても乗り越えてやろう。」アリーシャも微笑みながら、その小さな手を掲げた。
こうして、リハルトを拠点とした「蜂蜜街道」のプロジェクトは、本格的に始動した。
物流、産業、そして人々の暮らしを包括するこの計画は、新たな生活の礎となり、多くの期待と希望を背負っている。
ミツルたちは、これからも多くの課題が待ち受けているであろうことを承知しながらも、自分たちが成し遂げようとしていること、その意義を深く感じ、胸を高鳴らせるのだった。
彼らの思い描く未来が、確かに新たな一歩を踏み出したのである。




