第80話: 活動拡大の提案
レイモンド国王との対面を経て、ミツルたちは王宮での重要な会合に参加することになった。
そこでは、養蜂プロジェクトを王国全体に拡大するための詳細な計画を提示する場となる。
冒険者ギルドや商人ギルドとも密接に連携を図りながら、国全体に影響を与えるプロジェクトへと成長させようという試みである。
この日は、それを具現化するための重要な提案が行われる。
王宮の広間に足を踏み入れたミツルたちは、王都の冒険者ギルドや商人ギルドのギルドマスターが集まる中、全面的な協力を得ることの意義を改めて感じていた。
レイモンド国王がゆったりとした椅子に座し、彼らの入室を迎える。
「ようこそ、皆さん。今日は重要な提案があると聞いている。聞かせてくれ。」と、親しみを込めた声が広間に響く。
ミツルは一歩前に出て、深く呼吸を整えて提案を始めた。
「私たちはこれまでの養蜂プロジェクトをさらに拡張し、王国全体へ広めることを目指しています。ただし、それは私たちだけの力では到底成し得ません。そこで、各領地の冒険者ギルドや商人ギルドの力を借りたいのです。」
冒険者ギルドのリーダーであるハガードが頷いた。「具体的にはどのような協力を想定しているのかね?」
「まずは、以前教えていただいた強力な魔物が生息していたり、危険な道程の為あまり足を踏み入れられない地域のグラナイト・クレストやバルカン・ハイランドに、より高ランクの冒険者たちと共に赴き、そこでの蜜源植物や新種の蜂の魔物の情報を収集したいと思っています。もしくは蜂の魔物の生息エリアやそれらの特徴、高所や岩壁等に巣を作るところもあるのでそういう巣があるエリア等の情報の共有です」ミツルは具体的な計画を繰り広げた。
「確かに、そのような情報は我々の手に入れられるかもしれん。手の空いている優秀な冒険者達に相談してみたり、そう言う依頼を出してみて様子を見てみようと思う。」ハガードは思案深げに答えた。
さらにミツルは続けた。「商人ギルドには広範な情報ネットワークを活かしていただき、各エリアでの食糧状況や食料う自給率、自生する植物のリストを作成し、共有していただきたい。また、蜂蜜関連の市場情報も重要です。」
商人ギルドのエドマンドが温かな微笑みを浮かべ、「それなら我々にぴったりの仕事だ。情報共有については全面的に協力しよう。」と、快く応じた。
「また、これらの地域に養蜂場やミード製作所を設立することも考えています。」ミツルは熱心に続けた。
「建築に関しては今迄も協力してもらっているドワーフにお願いするつもりですが、そのサポートとして、働く人々には、売られてしまった奴隷や戦争孤児等仕方なく落ちぶれてしまった子供や差別による弾圧で不遇の扱いを受けている獣人、年齢やケガ等で冒険者として活動できなくなった者たちに新しい職場を提供しようと考えています。」
アリーシャがその提案を補足する。「そうすれば、彼らに教育や生活する術を提供できるだけでなく、地域の治安改善にもつなげられるでしょう。」
ミツルは転生前日本の学校で学んだ海外貧困国の教育や戦地では、子供がまともな生活を送れていない為ギャングやマフィア等の悪事に手を染める以外の道が無い。やそれら生活弱者達の足元を見て不当に安い賃金で奴隷として扱っている、と言うのを知り何とか出来ないかと心を痛めていた過去を思い出した。
「そして、元冒険者たちには警備や戦闘訓練を担当してもらうことで、その経験を活かしてもらえる。」エルザが続けた。
「こうして彼らの衣食住を保証することで、さらなる社会的貢献につながります。」
ミツルが学んだ世界史と日本史の中で後進国は何故後進国なのか!
そして日本は何故最古の国として一度も植民地化された事が無く、高い識字率を維持していたのか!
北海道の大自然の中どうすれば生き残れるのか!と言う実体験から「国の発展を担うのは子供達です!そして教育と生きる為の術を身に着ける事だと思っています。貧困による搾取や、無知による搾取が減ればそれら弱者を悪用したり、奴隷等で一部の権力者や貴族達が力を持ったり、富を独占するのを防げると思うんです!」
レイモンド国王は、彼らの考えを聞き、感心した様子で言葉を選んだ。
「君たちの計画は、非常に意義深いものだ。人々に新しいチャンスを提供し、王国全体にとって有益であることは明らかだ。まさか君達の様な若者がそこまでの考えを持って協力してくれるとは思ってもいなかった。」
「ありがとうございます、国王様。これを実現するために全力を尽くします。」ミツルは一同の顔を見渡し、彼らの決意を再確認した。
王は微笑み、「我々も引き続き君たちを支援しよう。冒険や商業の分野だけでなく、社会全体が共に歩むべき道である。」と、彼らの志を後押しした。
フィリア王女もまた、期待を込めた目で彼らを見つめ、「あなたたちのような方々がいることは、この国にとって大きな希望です。私にも何か出来る事があれば協力させてください。」と、声をかけた。
こうして、王国の更なる繁栄を目指すミツルたちの新しいステージは幕を開けた。その歩みは、目の前に広がる未来に向け、力強く進んでいったのである。




