第78話: 王との対面
ミツルたちは、王宮内部の豪華な廊下を緊張しながら進んでいた。
これまでの努力が実を結ぶ瞬間が目前に迫っている。
緻密に装飾された扉の奥には、この国の君主であり、養蜂プロジェクトの将来を左右する存在であるレイモンド国王が待っている。
バルドウィン卿をはじめ、彼らに信頼を寄せる人々の推薦を受け、ついにこの場に立つことができたのだ。
ドアが重々しい音を立てて開かれ、彼らが通されると、荘厳な王の執務室が広がっていた。
部屋の奥には、落ち着いた表情で彼らを迎えるレイモンド国王が座していた。
立ち上がり、ミツルたちに手を差し出す彼は、予想以上に親しみやすい雰囲気を持っていた。
「ようこそ、我が王宮へ。君たちがここまで来るのを楽しみにしていたよ。」レイモンド国王は温かみのある声で彼らに語りかけた。
「レイモンド国王様、お目にかかれて光栄です。私はミツルと申します。」ミツルは緊張しながらも、敬意を込めて頭を下げた。
「ミツル、そしてその仲間の方々、堅苦しいのは抜きにしてゆっくりと寛いで欲しい。」国王の促しに従い、ミツルたちは椅子に腰を下ろした。
「まずは君たちの成功、そして努力を称賛したい。バルドウィン卿からもその成果を聞いている。彼も君たちの手腕を高く評価しているよ。」国王は落ち着いた口調で続けた。
「ありがとうございます、バルドウィン卿には色々とお世話になり、色々な事を融通していただいたり、協力していただいたりとずっと良い関係を築いてきました。その気持ちや思いに応える為にも、養蜂を通じて、私たちの地域だけでなく、王国全体に貢献できればと考えています。」ミツルは感謝の意を示しつつ、彼の視点を述べた。
「養蜂に関しては以前はあまり知られていなかったが、君たちの取り組みによって、新しい可能性が見えてきた。本当に興味深い技術だ。」レイモンド国王は頷いた後、ふと考え込む様子を見せる。
「実は、私も日頃から領地の発展について考えている。バルドウィン卿と話す中で、養蜂をどう役立てることができるかについての議論があった。」
「そうでしょうか。私の今迄の経験から言えることもありますが、例えば蜂の受粉による農作物の促進効果は無視できません。これにより食料の生産性が確実に上がりますし、それが安定すれば街道整備にも役立つはずです。」ミツルは日本での経験を交えながら、具体的な提案を行った。
エルザも会話に加わり、「さらに、特定の蜜源植物を栽培することで、地域特産の蜂蜜やミードが育ち、経済的にも成長を促せます。特にハニィウィングやスティンガービーから得た蜂蜜には、独特な輸出価値があります。」と説明した。
アリーシャはミツルの提案を引き継ぎ、「私たちは既に、蜜源植物の選定や作物の栽培についても研究を進めています。それが叶えば、各地で農業の刷新が起こり、私たちの領地の生活も豊かになるでしょう。」と続けた。
「それに養蜂やミードの生産、蜜源植物の栽培、食料自給率が安定して余裕が出てきたら養蜂をする事で得られる副産物や蜂蜜を使って、女性達の生活向上に使える健康食品や美容製品等を作る事も可能です。やはり女性に活力があるのが全ての基本だと思いますので!」とミツルの考えを伝える。
「そのような可能性を聞くと、大いに興味が湧いてくる。」国王は彼らの話をじっくりと聞いた後、思慮深げに言葉を選んでいく。「君たちの取り組みは、決して私たちの国そのもので漏れることはあるまい。」
「国王様、お力添えをいただけるなら、養蜂を通じてもっと多くの人々の生活を良くしていきたいと思っております。」ミツルは真摯に訴えた。
「もちろんだ。今回の君たちの活動には、王族や貴族たちで協力し、可能な限りの支援や援助をしよう。具体的な計画については、しっかりと議論を重ねていくつもりだ。」レイモンド国王は彼らに向けて約束を告げた。
「ありがとうございます。私たちも精一杯頑張ります。」ミツルは深々と頭を下げ、他のメンバーも感謝の意を表した。
そして、これからの協力関係がさらに強固なものとなることを確信しつつ、彼らは王宮を後にした。この対面は、彼らが描く未来への第一歩だった。




