第77話: 王女フィリアとの偶然の出会い
王宮への重要な訪問を翌日に控え、ミツルたちは宮殿の庭園を散策し、心を落ち着けていた。
広大な庭園は緑豊かな木々と色とりどりの花々で彩られ、散歩するだけでも心地よい安らぎをもたらしてくれる。
ミツルたちはその美しさを堪能しつつ、これからの計画について思いを巡らせていた。
「この庭園、本当にすごいね。植物がたくさんあって、エルザなら何時間でも楽しめそうだな。」ミツルが微笑みながら言った。
「うん、今どんな花が蜜源になるか見分けようとしてたところ!」エルザは目を輝かせて周りを見回していた。
アリーシャも植物に興味津々の様子で、「ここの植物、私たちのプロジェクトに役立ちそうなものがたくさんあるね。今後の栽培に活かせることが見つかりそう。」と話した。
その時、ふと彼らの目に留まったのは、一人で庭園を歩く若い女性の姿だった。
彼女の高貴な装いと優雅な動きから、一目で王族であることがわかる。彼女こそがこの国の王女、フィリアだった。
フィリア王女はミツルたちに気づくと、穏やかな笑みを浮かべて近づいてきた。
「こんにちは、あなた方が王宮を訪れるという方々ね?」
「フィリア王女こちらが以前からお話ししている蜂蜜と言う物を私に伝えて先の不祥事の解決や領地復興に多大なる貢献をしてくれたミツルとエルザ、そしてアリーシャです。」とバルドウィン卿がミツル達に説明してくれた。
「こんにちは、王女様。この度はお目にかかれて光栄です。私はミツルと申します。」ミツルは少し緊張しつつも丁寧に答えた。
「ミツルさん、それにお仲間の方々、どうぞよろしくね。この庭園を楽しんでくださってるみたいで嬉しいわ。」フィリアは柔らかな声で続けた。
エルザとアリーシャも自己紹介し、フィリアと交流を始めた。
しばらく談笑した後、フィリアは興味津々な表情で尋ねた。
「知っていますか?この国には養蜂というものが広まり始めているって聞きました。」
ミツルはその言葉に心を踊らせ、養蜂の意義について詳しく語り始めた。
「はい、私たちがその普及を支援しています。蜂蜜はもちろん、ミードという飲み物も作っていて、これがとても好評なんです。」
「ミード?聞いたことがあります。興味深いですね!」フィリアの目が輝いた。
「それだけじゃないんです。それに加えて、蜂自身が植物の受粉を手助けすることで、さまざまな作物や花の育成が促進されるんです。小麦や果物、野菜の生産も上がります。」ミツルがさらに説明を加える。フィリアは感心して頷く。
「それは素晴らしいわね。この国の農家たちにもきっと喜ばれるでしょう。」
「はい、それに蜂蜜自体にも様々な活用法があります。蜂蜜を使った料理や調理法はもちろん、睡眠促進や麻痺を和らげる効果があるものもあるんです。」ミツルが熱心に話すと、エルザも加勢した。
「その通りです。例えば、様々な種類の花からから得られる蜂蜜は、花によって効果が違いますし、スティンガービーの蜂蜜はハニィウィングの蜂蜜と違って上位種の為魔力が宿っており、効果が高くなります!」エルザは具体的な使い方を示しながら説明する。
「そうなんですね。使い方次第では医療や日常生活、さらには戦闘においても応用できると言う事ですね。それは興味深いです。」フィリアはその可能性に興味津々であった。「是非、詳しく知りたいと思います。」
アリーシャもまた、「私たちはこの技術と知識をできるだけ広め、国全体の生産性を上げることを目指しています。そして、持続可能な農業の一部として養蜂を位置づけるんです。」と、彼女の視点から意見を述べた。
フィリアは彼らの情熱をよく理解し「皆さんの活動は、私たちの国にとってとても意義深いものね。父にもぜひ伝えてみてほしいわ。」と、彼らの努力を後押しした。
「ありがとうございます、フィリア王女様。私たちの活動が少しでもお役に立てれば嬉しいです。」ミツルは深く頭を下げ、仲間たちもその言葉に続いた。
その時、フィリアは思いがけない提案をした。「実は近々、王族による式典があります。その場で、ぜひあなたたちの活動を王と公衆に紹介してみてはいかがでしょうか?」
ミツルたちは驚きを隠せず、「そんな機会をいただけるなんて光栄です!ぜひとも参加させてください。」と嬉々とした答えを返した。
「では、詳細は後日お伝えしますわね。今日はありがとうございました。またいつでもこの庭園を訪れてください。」フィリアは優雅に挨拶し、その場を離れた。
ミツルたちはフィリア王女との交流を成功裏に終え、彼女の人柄と関心に心を打たれた。
次のステップへ向け、彼らの心には新しい希望が灯っていた。彼らはこの機会を最大限に活用し、王との対面を成功させるための準備をさらに進めることを心に誓った。




