第76話: 宮殿への道
王都ベルディアでの蜂蜜の品評会が成功し、ミツルたちは集まった反響の大きさに感謝しながらも、次なる目的地へ心を準備していた。
彼らの次の目標は国王レイモンドとの接見だ。
これまでの活動と成果を直接国王に報告し、王国全体への養蜂の普及を図るためには、彼の承認が不可欠だった。
ある日の朝、ミツルたちは商人ギルドに集まった。そこには商人ギルドのエドマンドと冒険者ギルドのギルドマスターハガードと副ギルドマスターフィオナ、彼らに紹介された信頼のおける貴族たちが待ち受けていた。
彼らはバルドウィン卿の協力もあり、ミツルたちが国王に謁見するための手配を進めてくれていた。
「おはようございます、みなさん。今日は大事な日ですね。」エドマンドはにこやかに迎え入れた。
「おはようございます、エドマンドさん。本当に感謝します。」ミツルは礼儀正しく声をかけた。
「おはよう、ミツル。今日は私たちも全力で君たちをサポートさせてもらう。」傍らに立つのは壮年の貴族、シリル卿である。彼は落ち着いた雰囲気を持ち、周囲からも信頼を集めている。
「心強いです、ありがとうございます。」エルザも微笑んで頷いた。
「これはお礼と言ってなんですが、お近づきの印に…」とミツルは巣蜜をシリル卿に渡す。プロポリスやロイヤルゼリーはやはり最初は王に献上した方が良いと思い巣蜜だけにする。
「これが巷で噂の蜂蜜と言う奴か!ありがたく頂戴する。ただバルドウィン卿から聞いていたものと違うが…」とシリル卿が困惑していた。
「これは巣蜜と言って蜂の魔物が住んでいる巣そのものです。蜂蜜も良いのですが、やはりそのままの方が貴重ですからね。それ以外にもあるのですが、やはり王に献上する方が先の方が良いと思いましてとりあえず巣蜜だけですが、後々他の物もお渡しいたしますね。」とミツルが説明した。
「その方が良いだろうな。気を使ってもらって感謝する。さあ、早速宮殿に向かうとしよう。王宮は厳重な警備が敷かれているが、君たちがやってきたという情報はすでに伝えてあるから安心していい。」シリル卿が案内を始める。
ミツルたちはエドマンドやハガード、シリル卿に導かれ、王宮への道を進んだ。
ベルディアの街並みを通過し、緑豊かな小道を歩くと、威厳ある王宮が見えてきた。
壮大な建物が目の前に現れ、ミツルたちはその美しさと歴史を感じ取る。
「ついにここまで来たんだね。」アリーシャが少し感動した様子で言った。「ここでの対面が成功すれば、もっと多くの人に僕たちの活動を広められる。」ミツルも決意を新たにする。
王宮の門をくぐると、そこには厳しい風情の守衛たちが待ち構えていた。
しかし、シリル卿が持参した証書を見せると、守衛たちは直ちに彼らを通した。
広々とした庭園を通り抜け、一行は王宮の玄関ホールに到着する。
しばらくして、ホールの奥から重々しい扉が開かれ、バルドウィン卿が現れた。「ようこそ、ミツルたち。ご無事で何よりだ。」
「バルドウィン卿、手配してくださりありがとうございます。」ミツルは丁寧に頭を下げた。
「全ては君たちの頑張りのおかげさ。王も君たちとの対面を楽しみにしているようだ。」バルドウィン卿は微笑みを浮かべた。
一行は王宮内部に通され、豪華な内装を目にしながら廊下を進んだ。周囲には歴代の王たちの肖像画や、王国の歴史を物語る精巧な装飾が並んでいる。
「ここは本当にすごいね。まるで物語の中にいるみたいだ。」エルザが感嘆の声を漏らした。
「うん、だけど気を引き締めていこう。この先に待っているのは王様だしね。」サラが的確なアドバイスを送った。
通されたのは広々とした待合室だった。中央には大きなテーブルが置かれ、その周囲には座り心地の良さそうな椅子が並んでいる。彼らは一息つき、次のステップに備えた。
「皆さん、少し休憩しましょう。」シリル卿が促し、軽くお茶を飲んで心を落ち着けた。
すると、隣の部屋から扉をノックする音が聞こえ、上品な侍女が姿を現した。「すみません、レイモンド国王が間もなくお会いになる準備を整えられました。」
「分かりました、準備ができ次第すぐに向かいます。」シリル卿は落ち着いた声で答え、皆に合図を送った。
一同は共に立ち上がり、再び気を引き締めた表情で待合室を後にした。
彼らは歩みを進め、王との対面の場へと向かっていく。
道中、彼らの心には期待感と少しの緊張が共に交錯していた。
扉の先には、これまでの努力が実を結ぶ可能性が待っている。ミツルたちは胸に希望を抱え、王へ報告する準備を整えたのだった。




