第74話: 王都のギルドとの交渉
王都ベルディアに到着したミツルたち。彼らはこの日の朝、商人ギルドに向かっていた。
商いの中心地であるギルドには、王都中の商人たちが集まり、情報や商談が交わされていた。
ミツルたちはまず、養蜂プロジェクトの成果物である蜂蜜とミードを販売できるか相談しようとしていた。
「さあ、行くぞ。準備はいいか?」エリオットが声をかけると、ミツルたちは頷きながら意気込んだ。「バルドウィン卿からの手紙もあるし、ちゃんと話をすればきっと通じるよ。」
商人ギルドの建物に到着すると、案内係の青年が対応してくれた。それからすぐに、ミツルたちはギルドマスターとの面会室へと案内された。
「お待たせしました。私は商人ギルドのマスター、エドマンドです。」温かい笑みを浮かべた初老の男性が彼らを迎えた。
その横には、若くて活気溢れる副ギルドマスターのフランクも立っていた。
「こんにちは、ミツルと申します。今日は、蜂蜜とミードの販売について相談をしに来ました。」ミツルは挨拶しながら、バルドウィン卿から預かった手紙を手渡した。
エドマンドは手紙に目を通しながら微笑み、「なるほど、君たちが養蜂を広めている若者たちか。バルドウィン卿からの話は聞いているよ。彼も君たちのことを高く評価していた。」
「どうもありがとうございます。」ミツルは少し緊張しつつも、心の中では安堵していた。
「そうだね、この手紙での話を元に、いくつか考えている計画がある。ただ、君たちが先に王へ謁見することを優先してほしい。王の了承があれば、より大きな計画に乗り出せるからね。」エドマンドは柔らかい声で続けた。
ミツルたちは少し戸惑ったが、このアドバイスは重要だと感じた。「わかりました。まずは王への謁見を優先します。
その間、こちらの商品を試して、反応を見ていただければ。」と、ミツルは蜂蜜とミードをエドマンドに手渡した。「もちろんだとも。感謝するよ。」エドマンドは優しく話し続けた。
商人ギルドを後にし、次に彼らが向かったのは冒険者ギルドだった。冒険者ギルドは活気に溢れ、多くの冒険者たちが街の仕事や新たな挑戦を求めて集まっていた。
そこで出迎えてくれたのは冒険者ギルドのマスター、ハガードと、副ギルドマスターのフィオナだった。
ハガードは筋骨隆々の中年男性で、フィオナは機敏で頼りになる印象を持つ女性だった。
「ようこそ、君たちはバルドウィン卿から紹介されてきたのか。手紙を見せてもらってもいいか?」ハガードは柔和な表情で初対面のミツルたちに手を差し出した。
「はい、まさにその手紙を持って参りました。よろしくお願いします。」ミツルが礼儀正しく手紙を渡すと、フィオナがそれを受け取った。
それから手紙を確認し、ハガードが「うん、やはりその計画を進めるには、王との信頼を築くことが何よりも重要だな。」と即座に判断する。
「商人ギルドで言われたのと同じですね。私たちも王の元へ行く準備をします。」ミツルも安堵しつつ、次のステップを考える。
ミツルたちは、冒険者ギルドにも蜂蜜とミードを贈り、王都の冒険者や商人たちからの反応を伺うことにした。
また、貴族や有力者には巣蜜やプロポリス、ロイヤルゼリーも贈り、彼らが広めてくれることを期待した。
「自信を持って進むんだ。結果は必ず後からついてくる。」フィオナは精一杯の激励を贈った。
これで二つのギルドとの交渉を終えたミツルたちは、再び目的地への道を歩むことになった。
王への謁見という大きな使命を背負いながら、彼らは心の中で期待と緊張を駆け巡らせていた。「商人ギルドも冒険者ギルドも協力的でよかったね。」エルザが安心した声で言う。
「うん、これで一歩進んだよ。王との面会が今のやるべき最優先事項だね。」アリーシャも勇気を持って話した。
「次は何が待っているかわからないね。でも、きっと俺たちならやり遂げられるさ。」ミツルは少しだけ晴れやかに、しかし決意を持って、未来に目を向けた。
ミツルたちの旅は続く。当面は王との謁見に注力するものの、この道の先に広がる可能性について彼らの心は常に開かれていた。
彼らが新たに学び、成長することでこの地の明日を形作っていく。仲間と共に、彼らは一歩一歩を確かなものとして刻んでいくのだった。




