第71話: 王都への旅路
初夏の日差しが心地よく肌を照らす頃、ミツルたちは緊張と期待を胸に、ついに王都ベルディアへの旅に出る準備を整えていた。
これまでに培った養蜂プロジェクトの成果を王国全体に広げる大きな目標を掲げ、新たな冒険が始まる。
「よし、この箱に巣蜜とロイヤルゼリー、プロポリスを詰めた。これを有力者たちに渡して、我々の取り組みを見てもらうんだ。」ミツルは慎重に巣蜜の入った木箱を指で弾き、仲間たちに確認を促した。
エルザはその横で、彼の手際を見守りながら、書類を整理していた。「ミツル、これで領地周辺の貴族たちに渡す準備は完璧ね。ギルドマスターや王室にもこれを持って行くつもりなんでしょ?」
「そうだね、実際に食べてもらって、どう感じるかの反応を知りたいんだ。」ミツルは微笑を浮かべ、思いを共有した。彼の目には確固たる意志が宿っていた。
王都ベルディアまでの道中、頼りになる仲間であるドラゴンテイルに同行をお願いしていた。
「ミツル、準備はOKかい?」エリオットはにやりと笑って声をかける。「俺たちが王都までしっかりエスコートしてやるから安心しろよ。」
「うん、頼りにしてるよ、エリオット」ミツルは力強く頷いた。
準備が整うと、一行はフレインの街を後にし、緑豊かな街道を進んでいく。
旧友や協力者に再会し、巣蜜を手渡しながら情報交換をしていく中で、彼らの旅路は進んだ。
古い街並みと新たなマーケットが調和する中で、ミツルたちは目的地へと着実に進んでいった。
道路の両側には美しい花々が咲き誇り、アリーシャはその様子を嬉しそうに観察していた。「この花たち、蜂蜜にどんな影響を与えるだろうね。」
「そうだね、この植物の自生地は養蜂場の選定に役立つかもしれない。」エルザも同様に興味を引かれていた。
彼女は養蜂場の植物選定を任されており、自然の中でどの植物がポテンシャルを持つのかを探ることに楽しみを見出していた。
道中、彼らはさまざまな風景を眺め、風に乗って流れる香りに和んでいたが、突如として雰囲気が変わる。辺りに緊張感が走り、一行は足を止めた。
「…何かいるな。」エリオットが低く呟く。辺りの草むらが不穏な動きを見せている。
ライアンは剣を引き抜き、すぐさま戦闘体制に入った。「全員、気を付けろ。」
次の瞬間、数頭の魔物が姿を現した。彼らは獣じみた咆哮を上げつつ、ミツルたちに向かって突進してくる。
「ミツル、エルザ、アリーシャは下がって!」エリオットが指示を出し、素早く前に立ちふさがった。彼の背にはドラゴンテイルのメンバーが続く。
サラは静かに呪文を唱え、魔法の力で闘いを支援する。「ライアン、右側!二頭が向かって来る…」
ライアンはその指示を受け、剣を高く振るった。「了解だ。散らばらせるぞ!」
魔物は力強く飛びかかろうとするが、ライアンの剣は確実に敵を捉え、反撃の余地を与えない。
エリオットもまた、見事な剣さばきで敵を仕留めていく。
その間にサラは癒しの魔法を唱え、仲間たちの体力を回復させつつ、切り札として控える強魔法を温存しておく。
「さすがだね、エリオットさんたち。」ミツルは戦う彼らを見つめながら、何かできることはないかと周囲を見渡した。
そんな彼を見たエリオットが軽く笑い、「安心しろ。それに、君たちがいるから我々も安心して戦えてるんだよ。」と声を掛ける。
戦いは数分で決着がつき、一行は再び旅路を再開する。
ミツルたちには貴族や街の商人にも話を聞いてもらい理解してもらうまで、まだまだ歩みを止めることはできない。
それこそが彼ら自身の成長へと繋がるのだから。
「ベルディアに着くまで、これからもっと学ぶことがあるんだろうね。」エルザが期待に満ちた声で告げた。
旅路の終わりに何が待つのか、それは今はまだ誰にもわからない。
それでも、ミツルたちは一歩ずつ確かな歩みを進めていた。それぞれの意志が結ばれ、大きな夢を実現に近づけていく旅は、まだ始まったばかりだった。




