第70話: 王国行きの準備
朝日が差し込む中、ミツルは拠点である養蜂場の庇下でせっせと作業を進めていた。
ミツルは蜂蜜の瓶詰めをしながら、これまでの努力が実を結びつつあることに、心の中で小さくガッツポーズをしていた。
今日の午前中にはバルドウィン卿と会う予定があり、何か大切な話があるということだった。
「ミツル、そろそろ時間じゃない?」エルザが外から顔を出し、ミツルを呼びかける。
「わかった、ちょうど終わったところだよ。」ミツルは手を止め、周囲を見回しながらビンの蓋をしっかりと締めた。「よし、行ってくる。」
エルザとアリーシャは、彼を見送る準備が整うまで待っていた。「バルドウィン卿から何の話があるのかな?」アリーシャは疑問を抱きながらも、顔に微笑みを浮かべた。
「わからないけど、きっといい話だといいな。」ミツルは少し緊張しつつ、でも期待の方が勝っている様子だった。
数時間後、ミツルはバルドウィン卿の館を訪れた。彼は予想以上にリラックスした雰囲気でミツルを迎え入れた。
「よく来てくれたね、ミツル。君とはもっと早く話をしたかった。」バルドウィン卿は自らの勘定を整理しながら話し始めた。
「今回の一連の騒動では、本当に君たちに世話になったね。おかげで領地も立ち直りつつある。」
「いえ、お役に立てて嬉しいです。」ミツルは頭を下げ、丁寧に応じた。
「それに加えてなんだが、君には今後の展開を見据えてある提案をしたい。王都ベルディアに行ってはどうだろうか?」バルドウィン卿は少し慎重に言葉を選んで話を続ける。
「ベルディアですか?」ミツルは少し驚きを見せながらも、関心を見せた。
「そうだ。王都には多くの貴族や有力者がいる。君の養蜂プロジェクトをもっと広く認知してもらうには、彼らに顔を売っておくのも悪くないだろう。」彼は微笑みながらミツルを見つめた。
さらに、バルドウィン卿はベルディアでの活動を円滑に進めるためのサポートも用意していた。
「私の名前を出せば、冒険者ギルドや商人ギルドでも協力は得られるはずだ。そこで必要なバックアップは整えてある。」彼は自信たっぷりに話した。
その言葉に対し、ミツルの中には新たな挑戦への意欲が湧いてきた。
「ありがとうございます、それは心強いです。」ミツルは深く感謝を示した。
ベルディア行きが叶うのなら、これまでの成果をより一層輝かせることができるだろう。
「ベルディアには、多くの貴族がいる。その中には、私たちの活動に理解を示してくれる者も多い。彼らに君を紹介する手配も考えよう。」バルドウィン卿はそう言って、ミツルの背中を後押しした。
彼の言葉は大きな期待感と、共に未来を描く力強さを感じさせた。ミツルは心の中で、その信頼に応えようと決意を新たにした。
その日は館での会話を終えて戻るが、ミツルの心はすでにベルディアへの道を歩む準備が整っていた。そしてその夜、ミツルはエルザとアリーシャにその計画を伝えた。
「それなら私たちも準備を整えないとね。」エルザは微笑ながら言った。
「大丈夫、しっかりサポートするから。ベルディアへ行く前に、できることを全てやっておこう。」アリーシャは力強く宣言した。
こうして、ミツルたちは王都ベルディアへの旅の準備を進めることになった。
それは新たな友好的な出会いや貴族たちとの連携、さらには蜂蜜産業を広げ地域社会をさらに潤わせる大きな一歩を意味していた。
このプロジェクトが王国全体にどのような影響を与えることになるのか、ミツルたちは力を合わせてその道を確かなものとする決意でいっぱいだった。




