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異世界養蜂革命  作者: 華蜂師
第1章:異世界での再出発
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第6話:初めてのスキル、インセクトテイマー

ある日、ミツルは再びゴードンとともに森を訪れた。

彼らはハニィウィングの集めている蜜源植物をさらに探索し、それを利用して村で養蜂の基盤を作りたいと考えていた。

森はますます深くなり、その中を進むのは困難であると同時に、新たな発見の期待に心が踊った。


その探索の中で、突然の不運に見舞われる。茂みの間から飛び出してきたのは、凶暴な魔物、スティンガービーだった。

それは、見るからに威圧的で、鋭い針を持ってミツルたちに迫ってきた。

「ゴードン、危険だ!」ゴードンは瞬時に防御の構えをとり、ミツルもまた身を守ろうとした。しかし、その恐怖の瞬間、ミツルは心の奥から湧き上がる衝動を感じた。


彼は本能的にスティンガービーに対して話しかけるように声を発した。「大丈夫だ、私たちは君たちに害を加えるつもりはないんだ。」


信じられないことに、その言葉に反応するようにスティンガービーの動きが止まった。スティンガービーはミツルを見据えながら、その針を引っ込め、静かに草むらに戻っていったのだ。


「まさか、あの魔物が君の言葉に耳を貸すなんて……」ゴードンは驚き混じりに語った。


その瞬間、ミツルは自分の中にある何か新たな力を感じ取った。

それは、あくまで完成されたものではなく、小さな虫の魔物さえテイムすることはまだ難しいが、新たなスキルの兆しに過ぎなかった。

しかし、異世界での新たな力の可能性を感じた初めての瞬間であった。


彼は今後、この新しい力をどのように駆使していくのか、まだ完全に理解せずとも、その日を成功の一歩として心に刻んだ。

彼の日々の努力は、村の未来を変え、そして異世界での彼自身の存在意義を確かにする重要なものだと感じていた。


スティンガービーからの一件は、今後ミツルがどのように異世界で活躍していくかの重要な礎となるであろう。

彼はまだ細かい制御しかできないが、インセクトならではの手法と、これから身につけるべき新たな知識と技術の中で、その可能性を広げていくのだった。


ミツルはゴードンと共にスティンガービーに遭遇した翌日、異世界での新たな生活の中で初めて訪れた慌ただしい朝を迎えていた。

昨日起こった出来事が現実だったのかと疑うほどに、彼の心は動揺していた。

村人たちのためにも、ハニィウィングやスティンガービーをなんとか制御できないものかと考えを巡らせながら、彼は森での壮絶な出来事を思い返していた。


あの瞬間、ミツルは何か特別な力を引き出した。

それは彼自身も予期しなかったスキルであり、瞬く間に自分の体が光で包まれ、ハニィウィングやスティンガービーを一時的に従えることができたのだ。

そのスキルこそ、彼がこの異世界で新たに得た「インセクトテイマー」だった。しかし、そのスキルは一筋縄ではいかない複雑さを含んでいた。


スキルが発動した瞬間のことを考えると、ミツルの体には疲労感が残っていた。

スキルを発現させた際に激しい体力の消費があったことは明らかだった。体中から力が抜けていく感覚に、その危険性を感じるほどであった。


ミツルは、一時的であれハニィウィングやスティンガービーを抑えられたことは大きな成果だと理解しつつも、その代償の大きさについても痛感していた。

彼は自分の内から溢れ出る力が、容易には扱えない危険なものであることを悟る。

その力は、まだ不安定であり、制御には技術と経験が必要だった。インセクトテイマーの能力をさらに磨くためには、限界を知って対策を講じる必要があった。


その日の午後、ミツルは村長アーノルドの家を訪れ、昨夜のことについて報告した。

アーノルドは真剣に耳を傾け、村人たちの安全を確保するためにミツルの努力を支持した。彼はミツルに対し、「自然とは時に人間に牙をむくものだ。だが、共存の道を探すのは決して無駄なことではない」と、励ましの言葉をかけた。


その言葉を胸に、ミツルは再び森へと向かった。ゴードンは、ミツルの背中を見送る際に「慎重に行動するんだぞ」と忠告を忘れなかった。ゴードンと共に過ごした時間が、ミツルにとってどれほど心強いものだったか、彼はその言葉に感謝を抱いていた。森の中に入ると、ミツルは再びハニィウィングやスティンガービーと向き合う決意を強くした。


ハニィウィングは比較的村に近い森の中に巣を構え、スティンガービーは、森の奥深くに蜂の巣を構えていた。その巨体から放たれる強烈な毒を持つ針は、一撃で致命傷を与えるほど危険だとゴードンが教えてくれていた。

だが、ミツルはこれを恐れるより、彼らと共存する道を模索したかった。


スティンガービーの生態を観察し、彼らの求める蜜源植物の種類や習性を理解しようと努めた。

その中で、ミツルは自分ができることを考え始めた。

「インセクトテイマー」のスキルは、まだ片鱗を見せたばかりであったが、可能性を秘めたものであることは間違いなかった。

しかし、スキルの使用には代償が伴うことを考慮しつつ、どうすれば効率的に共存できるのか、やや工夫を凝らす必要があった。


森を歩きながら、ミツルはスティンガービーに餌として提供できる適切な蜜源植物がないかを探し続けた。

彼は、スティンガービーが毒を持つことは既に分かっていた。だからこそ、彼は毒性のない蜜源植物を見つけることが鍵であると心に決めていた。


ハニィウィングやスティンガービーを操る力が限定的であり、それを活用するための訓練をしなければならないのは明らかだった。

ミツルはまたハニィウィングやスティンガービーの行動を観察し、その暮らしを深く理解することに専念した。このプロセスは容易ではなく、彼の体力を消耗させたが、同時に慎重に進めていかなければならないステップでもあった。


森の中で日が暮れる頃、ミツルは村へと戻った。彼の心中には、ハニィウィングやスティンガービーにおける新たな希望が僅かに芽生えていた。

しかし、同時にその挑戦の難しさにも気づかされた。蜂や森の生態を学び続け、彼らとの共存を実現するための道を探す決意をますます強くしていった。


夕暮れの中、ミツルは複雑な心境を抱えながら、再びゴードンや村人たちに報告するために足を運んだ。

彼の頭の中には、インセクトテイマーとしての更なる成長と、それに伴う課題が渦巻いていた。

彼は村の人々と共に、次の一歩を考える余裕を持ちながら、前進し続けることを決意したのであった。

この先には険しい道が待っていると知りながらも、彼はその目標を見失うことなく、異世界での新たな挑戦に勇敢に立ち向かっていった。

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