第55話: 貴族たちの思惑
エドワードが利用している貴族ネットワークの全貌がジョナサンによって明かされてから数日後、ミツルたちはアシュフォード領の隅々で粛々と動いていた。
彼らはエドワードの手駒となる協力者たちの動機と、領地内での利益独占の実態を掘り下げることで、事態をさらに深く理解する必要があると考えていた。
バルドウィン卿の居城で、領地の清浄化と再生に向けた密議が進められていた。バルドウィン卿は、大きな地図を広げ、深刻な表情でみんなを見渡す。
「エドワードの背後にいる協力者たちの思惑をはっきりさせ、彼らの根拠地を制圧する必要があります。ジョナサン、報告をお願いできるかな。」
「はい、卿。」ジョナサンは立ち上がり、集まった証拠と情報を基に説明を始めた。
「エドワードの主な協力者は、アーネスト、レベッカ、トーマス、そしてウィリアムです。彼らはそれぞれ異なる利権を追求することでエドワードを支えています。」
報告を聞いたバルドウィン卿がため息をつきながらみんなに謝罪した。「協力者はまさか自分の部下であり、要職についている人物だ。これに関しては私の管理不足としか言えない。本当に申し訳無い。」
ミツルがそれに対して答える。「バルドウィン卿が悪い訳ではありません。野心がある人と利害関係があっての協力関係であれば、バルドウィン卿の前や耳に入る様な状況で本性を現す様な事はしないと思いますからね。ちなみに協力者たちはどんな利権があるの？」
「まずアーネストですが、エドワードの指示の元貴族と言う立場を使い交易権を独占しています。それにより、領地から外への物資流通を自身の都合の良いように制御しているんです。」
ジョナサンは地図の特定のポイントを指した。「さらに、会計担当のウィリアムは蜂蜜の売上を不正に操作し、利益をエドワードと分け合う為に色々とした準備をしているみたいです。これが領地の財政にどれほどの影響を与えているか想像に難くありません。」
バルドウィン卿はため息をつき、思案するように目を閉じた。「交易と財政の両輪が抑えられることで、我々の行動が抑制されてしまう。これは迅速に対策を講じなければならない。」
エルザが手を上げた。「レベッカとトーマスはどうですか？彼らも何かしらの利権を持っているはず。」
「その通りです。」ジョナサンはメモを確認する。
「バルドウィン卿の秘書であるレベッカは情報操作の名手で、エドワードの元情報操作員として影響力を誇示しています。外部からの情報を巧妙に遮断し、必要な情報だけを地域に流すことで、エドワードの悪事を隠蔽してきました。」
そして、ミツルが思い出したように言う。「騎士団副団長のトーマスは武力か。彼のような武闘派がいると、何か問題が起きたときに力で支配しようとするだろうな。」
「その通り。」ジョナサンは頷く。「彼の忠実さはエドワードに対するものだけではなく、恐ろしいことに領地の戦力にもかなりの影響を及ぼしている。」
バルドウィン卿は深く頷き、「彼ら全員の動機を逆手に取ることで、我々の目的を達成することができる。私たちは、現在までの情報を基にして、この状況を打開するための計画を練る必要がある」と言った。
その場にいる全員が、領地内で繰り広げられる利権争いの緊迫感を肌で感じながらも、希望を胸に刻んでいった。
その夜、ミツルは仲間たちと共に密かに集まり、ジョナサンの情報を元に具体的な対策を議論し始めた。
彼らはエドワードとその協力者たちを切り離し、領地を浄化するために次にどのような手を打つかを考えた。
「あいつらの動きは抑えられてないんじゃない？」アリーシャが心配そうに口を挟んだ。
「まだまだ大丈夫さ。」ミツルは微笑んで答える。「俺たちにはまだ手がある。エドワードたちの悪事をしっかりと暴いて、領地全部を浄化するんだ。」
彼らはその後、具体的な戦術を計画し、各自の役割を再確認しあった。
ミード製作隊が力を合わせて戦う覚悟を新たにしながら、次なる闘いへの準備を進めていった。領地の未来を取り戻すための戦いの幕が、間もなく開こうとしていた。
