第53話: エドワードの後ろ盾
夜明け前の薄暗い森。ジョナサンは身を潜め、まだ眠っているかもしれない村を眺めていた。
彼は情報を集めるため、エドワードの周囲を慎重に監視し続け、ようやくいくつかの手がかりを掴もうとしていた。
エドワードが利用している貴族のネットワークや贈賄の手口、それに絡む協力者たちの存在を暴き出すことが今回の目的だ。
ジョナサンは川辺にある小さな居酒屋の裏口に忍び込み、中での会話を盗み聞きする準備をした。彼は声を出すことなく静かに耳を澄まし、窓越しに微かに聞こえる会話を拾い上げていく。
「エドワード様が我々に保証してくれる限り、心配はいらないだろう。利益は保証されている。」男の声が言った。
「だが、彼に対する信頼は絶対ではない。今までの成果が彼の手の中にあるだけだ。」別の声が反論する。
この会話から、ジョナサンはエドワードがどのように貴族たちを動かしているのか、その一端を把握しつつあった。
エドワードは様々な貴族に対して彼らの利益を保証することで、表では見えない繋がりを築いている。そして、その結果得られる権勢で彼自身の地位を固めているのだ。
さらに聞き進めると、エドワードが頻繁に贈賄を行っていることも判明した。
ある貴族は領地内での特定の交易権を得るために彼に賄賂を送り、また別の者は軍事的な便宜を得るために関係を築いていた。
これらの策略的な動きが、バルドウィン卿たちの計画を危険にさらしている大きな要因であった。
ジョナサンはその情報を率先してまとめ上げ、エドワードと彼の後ろ盾となっている貴族たちの暗躍の全貌を明らかにしていった。
その晩、彼はミツルや仲間たちが集まる秘密の会合場所へ急行し、詳細を説明する準備をしていた。
会合が開かれたのは、村外れの古びた納屋だった。ミツル、アリーシャ、エルザ、バルドウィン卿、そしてアンドリューがすでに集まっており、ジョナサンの到着を待ちわびていた。
その顔には不安が色濃く宿っているが、どこか期待のようなものも感じられる。
納屋の扉がきしむ音を立てて開き、ジョナサンが中に入ってきた。「お待たせ、ようやく一通りの情報を集めることができた。」
ミツルがすぐさま促す。「で、どうなってるんだ?エドワードの奴、どんな手を使ってる?」
ジョナサンは懐から抜き取ったメモを広げ、彼のまとめた情報を順を追って説明し始めた。
「エドワードは領地内の複数の貴族と繋がっている。彼らは彼との関係で様々な利権を手に入れているんだ。そして、その関係を築くための手段として、頻繁に贈賄を行っていることも分かった。」
アリーシャが忌々しげにため息をついた。「やっぱりそうか…利権を盾にして多くの者を巻き込んでいるんだな。」
バルドウィン卿は考え込むように口を開いた。「これまで我々が感じていた不安は正しかったというわけだ。だが、これで彼の計画を阻止するための大きな手掛かりを得たと言えるだろう。」
エルザは、冷静に今後の動きを考えていた。「集めた情報をどのようにして阻止に繋げるか、具体的な計画が急務だわ。」
ジョナサンはさらに説明を続けた。「貴族たちが保持している利権の詳細も掴むことができた。彼らがどのようにその利権を維持し、どうやってエドワードと繋がっているのか。それらを一つ一つ崩していけば、やつの支配力を弱めることができるかもしれない。」
ミツルは決意を固めた様子でみんなに訴える。「俺たちのやるべきことははっきりしたな。エドワードの不正を暴き出して、領地を正常に戻すために俺たちの力を合わせるんだ。」
この会合を通じて、彼らの結束はさらに強くなり、エドワードに対抗するための具体的な次の一手を考え始めたのだった。
これからの戦いは厳しいものになるかもしれないが、彼らは決して諦めないと固く誓い合った。
この先、彼らの計画がどのようにしてエドワードたちの策略を打ち破っていくのか、希望と不安が入り混じった彼らの心に、静かなる攻防の幕が上がり始めていた。




