第52話: 影の情報網
夜の帳が下りた領地内、ひとつの影が静かに動き出す。ジョナサンだ。彼はエドワードの動向を探るための調査を開始していた。
エドワードは貴族たちのネットワークを駆使し、裏で暗躍していると言われているが、その証拠がなければバルドウィン卿たちの計画は水泡に帰す。
ジョナサンはそのリスクを承知の上で、見えない網の目を丹念に広げていった。
ジョナサンがまず目を向けたのは、領内に点在するエドワードの協力者たちだ。彼が動かしているのは、ただの部下ではない。贈賄や策略を張り巡らせる闇の一団である。
彼の最初のターゲットは、エドワードの資金源とされる貴族アーネストだ。アーネストはエドワードと古い友人であり、利益を共有する形で領内の不正な資源を支配している。ジョナサンは彼の動きを追うため、影の情報網を駆使した。
「借りは返すぜ。」ジョナサンが小さくつぶやく。彼はかつてアーネストに兄を騙され、大切なものを失った経験があった。今回の任務は、個人的な復讐心も交わっている。
一方、ミツルたちもその頃動き出していた。エルザはハーブや薬草の特徴を活かし、蜂蜜の味や効能を高める植物を研究中だ。
「ミツル、次の収穫の蜜はさらに期待できるよ。薬草から採れる蜂蜜が、エドワードとの争いにも力を貸してくれるといいね。」
アリーシャも負けてはいない。「街道沿いの畑の状況も良好だし、心配ないよ。今のところ予定通りにいってる。地元の人たちも協力してくれてるしね。」彼女の言葉には確かな自信がみなぎっている。
しばらくして、ジョナサンはアーネストが密かに会合を開いているという情報を掴んだ。
それは領地から少し離れた古びた館で行われるとのこと。彼は、そこでの出来事を探るため、夜陰に紛れて潜入する策を考える。
そして、予定の日。ジョナサンは完全な黒装束に身を包み、館の裏手から忍び込んだ。彼の動きは、暗闇の中でも猫のように静かで、獲物を狙う猛禽のごとく鋭かった。
館に侵入すると、薄暗い廊下を静かに歩み、次第に奥へと進む。やがて、扉の向こうから男たちの低い話し声が漏れ聞こえてきた。ジョナサンは音を立てぬよう耳を傾ける。
「エドワードは次の計画にも意欲を見せている。税の件も私たちが手を回している限り、問題はないだろう。」声の主はおそらくアーネストだ。
「そうか。ただ、領民たちが反発しないように気をつけなくてはな。動きが鈍くなる。」別の男が応える。
彼らの会話から、エドワードの計画が領地に与える具体的な影響を感じ取ることができた。ジョナサンは、さらに聞き耳を立てて情報を集めようとする。
「ミードを試験的に導入するらしいが、本当に利益が出るのか?まだ信用できん。」第三の声が疑念を呈する。
ミード、すなわち蜂蜜酒が彼らの計画の一環として取り入れられることを耳にし、ジョナサンは思わず息を飲む。
それはミツルたちが築いてきた蜂蜜のネットワークを脅かさんとする動きに他ならない。より詳細な情報を得る為情報収集を重点的に行う計画を頭の中で建てる。
帰路に就いたジョナサンは、そこで得た情報を整理しながら暗闇の中を駆け抜ける。
影の情報網を活かし、さらにエドワードの陰謀を暴く手がかりを手に入れることを目指していた。
翌朝、ミツルたちが集まっていた。彼は、昨夜の出来事を一同に伝えるため、格別の注意を払いながら話し始める。
「みんな、ちょっと聞いてくれ。エドワードはミードを計画の一環として取り入れようとしているらしい。」
「それってどういうこと?」アリーシャが驚きの声を上げた。彼女にとってミードはただの飲み物ではなく、地域の重要な産業であり誇りだった。
「奴らにミードを独占させるわけにはいかない。」とミツルが強く言い切る。「俺たちの作ったものを利用されるのは絶対に許せない。」
さまざまな思いが交錯する中、彼らはさらなる対策を練るための進行が必要だと意識していた。
情報の価値と情報網の力をこれまで以上に感じ取り、彼らの結束が強まる瞬間だった。
次回に向けた布石として、ジョナサンが張り巡らした影の情報網がどのようにして彼らの目的を達成する助けとなるのか、ミツルたちは気を引き締め、新たな段階へと歩みを進める決意を新たにするのだった。




