第48話: 盗賊の襲撃
静かな夜が訪れたフローリア村。この夜の闇はただの夜ではなく、何か不穏な緊張感を孕んでいた。そして、その直感は正しかった。
養蜂場の隣にある木々が夫人の衣のように揺れる影で、盗賊団のメンバーたちは影のように動き出した。
彼らの目は鋭く暗闇に慣れており、エドワードからの命令に従い、慎重かつ速やかに行動を開始する。
養蜂場に到達すると、彼らは巣箱に手荒な手を加え始めた。次から次へと巣箱が地面に叩きつけられ、破壊されていく。
その音は夜風と共に消えていき、静寂の中で影の如く吸収された。盗賊たちはさらに進み、未完成の建築の材料を次々と盗み出す。彼らの手は止まることなく、フローリア村の平和を脅かす。
一方、翌朝早く訪れた現場で、この惨状を目の当たりにしたミツルたちはしばし言葉を失った。
壊された巣箱、なくなった資材の山を見ると、これまでの努力が無にされるような感覚が彼らを襲った。
「これは...ひどいな。」アリーシャはその場に立ち尽くした。彼女の声は怒りと失望の色を帯びていた。
エルザが慎重に周囲を観察し、破壊の爪痕を確認する。「ここまで計画的にやられてるってことは、今回のこと、ただの偶然じゃないかもね。」
ミツルは腕を組み、その場で思考を巡らせた。「確かに、単なる盗賊の仕業に見えない。何かもっと大きな意図が隠されているんじゃないか。」
その場に集った仲間たちは沈黙しながらも、共有した思いが一つにまとまっていく。それは、この事件がただの偶然ではない、という可能性だ。
バルドウィン卿に相談するため、彼らはバルドウィン卿の元へ急ぎ向かった。
バルドウィン卿とアンドリューは静かに彼らの話を聞き、次に心配そうな顔で口を開いた。「これは重大な問題だ。騎士団を派遣し、監視と警備を強化する手配をしよう。」
ミツルは、そう提案されたことに感謝しつつも、内心では別の懸念を抱えていた。
今回の蜂蜜街道の詳細を知っている人は少ない。そしてその中でベリル村とフローリア村の中間地点にあるまだ建築途中の未完成の養蜂場やミード製作所を襲ったり、破壊したりするメリットがその辺の盗賊団ではあるとは思えない。
そうなると騎士団の一部が不審な動きをしているかもしれないという懸念が思考を支配していたためだ。
バルドウィン卿とアンドリューはなんども会ったり話し合いをしていてそう言う事をする人とは思えないし、長年の悲願である蜂蜜街道計画の進捗を邪魔する理由は無いと思える。
その後、ミード製作隊とドラゴンテイルのメンバーたちは秘密裏に集まり、今後の対策について話し合った。
「この襲撃は計画的なものだと思える。何か裏があるに違いない。」ドラゴンテイルのリーダーであるエリオットは静かに言った。
「僕たちだけでは手が足りないかもしれないけど、ドラゴンテイルのメンバーが養蜂場や騎士達の動向を調べてくれるんだよね。それで、何かわかったら知らせて。」ミツルは彼らに依頼し、安心感を得る。
エリオットは力強く頷いた。「任せろ!俺たちは何があっても、君たちを支えるから。」
一同は互いに信頼を寄せ合い、未来のために何をするべきかを明確にした。
その日から、ミツルたちは盗賊の再襲撃に備えつつ、街道整備を続ける覚悟を新たにした。
彼らは心を一つにし、問題に立ち向かう力を取り戻していく。そして、その小さな決意と行動こそが、フローリア村の未来を照らす光への一歩であった。




