46話: 陰謀の芽生え
フローリア村は、蜂蜜街道の建設が順調に進む中で活気づいていた。しかし、その影には不穏な動きが密かに進行していた。
バルドウィン卿の側近であり騎士団長としての顔を持つ男、冷酷かつ野心的なエドワード・ブラックウェルの存在がそれである。
彼は貴族の三男として生まれ、何不自由なく育った上、親の威光により領主の右腕として君臨し、常に権力の頂点を狙っていた。
表には出さないがバルドウィン卿の事を邪魔だと思っている節がある。エドワードは騎士団長と言う地位を悪用し、様々な悪事に手を染めていた。
騎士と言う職業は治安維持や争い事への参戦やイベント事の警備等多岐に渡る。それだけ関わる人も多ければ色々な利権を得る事が出来る。
小さい所で言えば、賄賂をもらって管轄エリア内の犯罪者を見逃したり、捕まえたとしても微罪で解放、釈放したりする。
そうする事で裏稼業の上層部とも繋がりが出来、表の実権と裏の実権を掌握しようと画策をしていた。
だが、バルドウィン卿やアンドリューにばれない様動かなければいけない為、自由には出来ないし大きい事をするのには関与する人数が増えるのでばれる可能性が増える。
今迄築き上げた利権の確保にはそれ相応の期間と根回し等の準備が必要なので、それが瓦解するのはどうしても許せなかった。
エドワードは、蜂蜜街道の成功が進むにつれ、自分の影響力が薄れていくことを恐れていた。
そこで彼は陰謀を巡らし、密かに動き始めることを決意する。この計画を実現するために彼が最初に声をかけたのは、美貌と知性を兼ね備えた秘書、レベッカ・グリーンだった。
レベッカはエドワードの腹心であり、冷酷な計画を共に練り上げる存在だ。
彼らの間には深い信頼と共謀があり、レベッカはいつも彼の指示に従って動く。「エドワードさん、フローリア村やベリル村、リハルトの繁栄は目覚ましいですが、それだけに私たちの立場も危険です。何か手を打たなければなりませんね。」
エドワードは鋭い眼差しを浮かべ、「そうだね、レベッカ。だが、我々には計画がある。この街道が完成すれば、我々の影響力の大部分は失われてしまう。それを阻止しなければ。」と静かに話した。
さらに、エドワードは騎士団副団長のトーマス・ブラウンにも協力を求める。
トーマスは熱血で武闘派の性格を持ち、エドワードを兄貴分のように慕っていた。彼は忠実にエドワードの命令を遂行し、そのためには手段を選ばない。
「トーマス、お前の力が必要だ。あの養蜂場を襲って混乱を招く。俺たちの計画に従って動いてくれ。」エドワードは信頼を寄せるトーマスに指示を出した。トーマスは頷き、力強い声で応じる。「任せてください、エドワードさん。僕たちが全力を尽くします。」
このようにして、エドワードの陰謀のピースは徐々に配置されていった。さらにもう一つの駒が動く。
会計係のウィリアム・ホワイトもまた、エドワードの計画に加わっていた。彼は狡猾で金銭に執着し、エドワードと共に蜂蜜街道の利権で私腹を肥やそうと企む。
「ウィリアム、この計画が成功すれば、我々の利益も大きくなる。そのために、君の知識を活かして不正な金の流れをうまく隠すんだ。」エドワードはウィリアムに頼み込む。ウィリアムは冷笑を浮かべながら応じた。「もちろんです、エドワードさん。私の能力を存分に使わせていただきますよ。」
彼らの過去の悪行は、数知れない。エドワードは権力闘争に勝ち抜くために、数々の陰謀を企て、邪魔者を排除してきた。
レベッカはその命令で、多くの者を陥れ、裏切る。そしてトーマスは、エドワードの命令で村人を襲い、財物を奪ってきた歴史を持つ。ウィリアムは領地の財政を不正に操作し、私腹を肥やしてきた。
この四者による悪の連鎖が、今、フローリア村の未来に暗い影を落とそうとしている。
彼らの狙いは、バルドウィン卿を失脚させ、新たな領主の座にエドワードを立たせることだ。エドワードは冷酷な笑みを浮かべながら、その時を待ちわびていた。




