第45話: エルフの秘法と新たなる進化
蜂蜜街道の整備が進み、村の活気が増している中、ミツルたちは新たな試みを模索していた。ある日の午後、シルヴィアがその優雅な姿で村を訪れた。
ミツルたちは彼女を歓迎し、村の広場で自由な対話の場を設けることにした。彼らは、彼女が持つ特別な知識と能力に興味津々であった。
シルヴィアはその静かな声で、エルフの中でも特に珍しい能力について説明を始めた。「私は歌声に魔力を込める事が出来ます。そしてその魔力のこもった歌声を使い、エルフの使う草木魔法を併用すると、特定の植物に聞かせる事で、一時的にその効果を強化することができます。少しの間ですが、あなた方のプロジェクトに役立てることができるかもしれません。」
この話に、エルザは目を輝かせた。「それはすごい!新しい蜜源植物の研究において、そのような強化ができれば、我々の蜂蜜作りに大きな進歩が期待できるかもしれない!」
しかし、その話にはデメリットもあった。シルヴィアは慎重にその点についても説明した。「ただ、注意すべきこともあります。これは特別な魔法で、私の魔力を大きく消耗します。一日に一度だけが精一杯で、強化した植物も一定の期間が経てば消えてしまうのです。」
そこで、ミツルが少し考え込んだ。「一時的にでも、強化された植物から採取できる蜜の質が上がるなら、試してみる価値はありそうだ。でも、その消えるタイミングをよく考えないといけないね。でも何度も実験をするのはシルヴィアに負担がかかるのでは?」
アリーシャが頷きながら意見を加える。「そうよね。一時的な強化でも、栽培の仕方を工夫して何らかの利益を出せるかもしれない。一緒に考えよう。エルザの言う通りシルヴィアの体調を最優先に考えながら無理なくゆっくりと試していけるといいよね!私達のエゴで森やシルヴィアに負担が掛かるのは、自然からの恵みの恩恵を受けているの私達にとって本意ではないからね!」
シルヴィアは、彼らの前向きな反応に優しく微笑んだ。「私の力が少しでもお役に立てるなら、ぜひ協力させてください。ハニィウィングやスティンガービーにそれらの亜種に何かしらの影響を与えられると思います」
こうして、彼女の秘法を用いた新しい試みが開始されることとなった。
まずは小規模な実験として、適度な環境で彼女の歌声による強化を試みることに決めた。ミツルたちはこの機会を前向きに捉え、実験の成果を密かに心待ちにしていた。
その日の夕方には、ミツルとシルヴィア、そしてミード製作隊のメンバーが集まり、実験用の植物を選定し、配置を整えた。
夕焼けが山々を染めるころ、シルヴィアは静かに目を閉じ、深い呼吸で魔力を高めていった。今回実験に使うのはラディアンフラワーだ。
基本となる蜂蜜に使われる蜜源植物なので、変化が一番分かりやすいとエルザが言うのでこれに決定した。
ハニィウィングとスティンガービーがこの強化されたラディアンフラワーから採った蜂蜜がどうなるのか楽しみである。
まるで自然と一体化するかのようなその歌声は、彼女の周囲に響き渡り、選定された植物たちにじんわりと届く。空気が変わった瞬間、一同は肌でその変化を感じ、何か特別なことが起きているのを悟った。「あの瞬間の中に魔法が宿ったんだ」とミツルは感嘆した。
実験が終わり、シルヴィアは少し疲れた様子を見せながらも、充実感に溢れた表情を浮かべていた。
「これでどれほどの影響を与えられるか、不安でもありますが、楽しみにしています。」
彼女の力を見たミツルたちは、その成果を見守りつつ、さらなる可能性を模索していくことを約束した。
彼らはこの新たな協力によって、自然との共存と発展の新たな形を模索するための一歩を確かなものにしていくのだった。




