第22話: リハルトでの挑戦
リハルトの街にたどり着いたミツルたちは、その騒がしさと賑わいに圧倒されつつも、目的意識をもって冒険者ギルドへと足を運んだ。
この大都市の冒険者ギルドは、冒険者だけでなく商談の場としても多くの人々が行き交う場所であり、彼らの手にした商品の良さを広めるには理想的な舞台であった。
楽しげに話しているドラゴンテイルのメンバーと一緒に到着したミツルたち。
やはり彼らの心境を理解してくれているエリオットが、ギルドマスターとの面会を可能にしてくれたことに心から感謝していた。
「本当にありがとう。エリオットたちのおかげで直接話せる機会をもらえてるんだね」とミツルは感慨深げに語った。
ドラゴンテイルの仲間たちは、「仲間を助けるのは当然のことさ」と笑顔で彼らを激励。
そのままギルド内に足を進め、ミツルたちはギルドマスターのバルドックといよいよ対面することとなった。彼は大柄で力強さが滲む風貌をしていたが、どこか優しさも感じさせる風貌であった。
「ようこそ。ドラゴンテイルから聞いていたが、お前たちが持ってきた品物が楽しみでしょうがないんだ!エリオット達が宣伝するからこの冒険者ギルドでも興味を持っている奴がたくさんいるよ!」とバルドックは早速手招きし、興味津々に彼らの持参した商品をチェックした。
まずミツルたちが用意した蜂蜜を各種試食してもらう。特にヘリオスフラワーの蜂蜜には目を丸くし、「これは冒険者にもってこいだな。本物の力を感じる」と彼は称賛の声を上げた。
息を呑むような静けさの中で、次にミードが紹介され、ドラゴンテイルの助けを借りて準備万端整えられたグラスに注がれた。
その黄金色の液体がグラスの中で揺れる様を見て、バルドックはゆっくりと口に含んだ。その奥深い味と香りに、彼は瞳を輝かせて感嘆の声を漏らす。「これは……予想以上だな!」
ミツルはその表情に安堵感を得たが、交渉はここからが本番。値段交渉が始まると、バルドックは難い顔を見せた。
「確かに素晴らしいが、冒険者たちの懐具合を考慮すると、高額ではなかなか手が届かないだろう」と慎重に話し始め、「この効果がある品物だからこそ、我々の街に広く知ってもらうには、もう少しリーズナブルな価格で扱えないか?」
ミツルたちは、この商品が価値あるものであることを心から信じていたが、バルドックの意見も理解し、その意見を受け入れることにした。
「では試作品として今回に限り1樽あたりの価格を50ギルにしてお互いにとって良い取引ができるようにしましょう!後は売れ行きや評判を見て決めませんか?」と彼は言う。
交渉の結果、バルドックも納得の表情を見せて商談はまとまった。
こうして、ギルド内での好評に乗じて、バルドックはギルドにいる冒険者達にもこの品物をシェアすることにした。「おい、みんな!これを試してみるんだ。新しい出会いと風味を味わえるぞ!」と彼は笑顔で声をかける。
冒険者たちの中にはその飲み会を楽しんでいる者たちがいて、次々にミードを口にする。
蜂蜜の芳醇さと発酵から生まれる複雑な味わいを口に含むと、驚きと賞賛の声が飛び交った。
「こいつは良いね!どこで買えるんだ?」という問いに笑みを返し、ミツルたちは今回の試飲会が成功裏に終わったことに満足感を覚えた。
ドラゴンテイルのメンバーたちも仲間たちとの時間を楽しみつつ、それぞれミツルたちの品の質を高く評価してくれた。
「こうやって実際に口にすると、また新しい発見があるものだね」とライアンが言えば、サラは「リハルトでの評判もこんな風に広まっていくといいね」と声を弾ませた。
彼らの冒険者ギルドでの成功は、商品が確かな品質であり、彼らが努力の果てに何を得られるかの証明でもあった。
ギルド内で様々な冒険者たちからのポジティブなフィードバックを受け取り、ミツルたちは次の段階に進む意欲をさらに燃やすこととなった。
そう将来に思いを馳せていると、少し酔っぱらってテンションの高いバルドックが「このまま商人ギルドにも営業しに行こう!俺が一緒に行けば向こうのギルドマスターとも交渉できるから今から行くぞ!」と無理やり連れてかれる展開になってしまった。
ミツルたちはもちろんドラゴンテイル一同も少し呆れていたが、バルドックの人柄と、今回の行商に対して確かな手ごたえを感じていた一行は意気揚々と商人ギルドへと向かった。




