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異世界養蜂革命  作者: 華蜂師
第1章:異世界での再出発
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第1話: 目覚めは異世界、そして記憶喪失

目が覚めると、見知らぬ景色がミツルの目に飛び込んできた。

空は澄んだ薄青色に広がり、風に乗って柔らかな草の匂いが漂ってくる。周囲には石造りでありながら半ば木組みで構成された家々が立ち並び、その中を地元の人々と思わしき者たちが歩いている。

けれども、彼らの口から発せられる言葉は知らない言語であり、日本語とは全く違う言語だった。


心の中に不安が渦巻く中、一人の老人が近づいて来た。

彼は優しい眼差しでミツルを見下ろし、柔らかな声で問いかけた。「大丈夫かい?」その言語はミツルになぜかすんなりと理解できた。


「ここはどこですか?」ミツルは混乱しながらも、何とか声を出した。

その声は彼自身が思っていたよりも遥かにか細く、力がなかった。


老人は優しい微笑みを浮かべながら答えた。

「ここはフローリア村だよ。君は村の近くの森で倒れていたところを、村人たちが見つけたんだ。体調の方はどうだい?」

ミツルは自分の記憶を手繰り寄せようとしたが、それはまるで霧の中に消えてしまったかのようで、何一つはっきりとは思い出せなかった。


「俺は……山田ミツル……か。」それだけが何とか思い出せた自分の名前だ。

「ミツルか。良い名前だね」と言うと、老人は親しげに微笑んだ。

「わしの名はアーノルド・ウッドランド。この村の村長をやっているんだ。何も心配することは無い、ここは安全な場所だよ。」


アーノルドが手招きすると、彼の傍らから一人の若い女性が現れた。

彼女は赤い髪と碧い瞳をしており、その表情には活発さと穏やかさが共存していた。

彼女はミツルに向かって明るい声で言った。「ようやく目を覚ましましたね!良かった、ずっと心配していたんですよ。」


その言葉に、ミツルの心は少しだけ安らいだ。

アリーシャの言葉一つ一つに曇りのない真実が宿っており、それがこの新しい現実を受け入れるためのきっかけとなったのだ。


彼はなおも心の内で問いかけ続けていた。自分は一体どうなってしまったのか。

この村、この世界が何なのか、そして自分は元の場所に戻ることができるのか…徐々にではあるが、自分が日本ではなく、異なる世界にいるという事実が現実味を帯び始めていた。


一瞬、友達がよく話していた「異世界転生」の話が頭をよぎった。

「まさかこれが噂に聞く異世界転生というやつか?」と彼は思ったが、その想像には現実味がなかった。

異世界に行った人が特別な力を持ったり、貴族になったりするという物語はよく耳にしていたが、今のところ自分がそれに該当するとは到底思えなかったからだ。

しかし、この異世界の言葉を理解し、話せることができるだけでも十分なのかもしれない、と無理やり自分に納得させる。


アーノルドは、ミツルの思いを察したかのように続けた。「記憶が戻るまで、ここでゆっくりしていくと良い。必要なものがあれば何でも言ってくれ。」


ミツルは少し安心しつつ、改めてこの村について尋ねた。「ここ、フローリア村はどんな場所なんですか?」


アーノルドは穏やかに微笑みながら説明し始めた。

「フローリア村は、周囲を豊かな自然に囲まれた小さな村だよ。でも食料も十分ではなく最低限しか無いが、みんなで助け合いながら日々を暮らしている。古くからこの地に根付いているんだ。」


アリーシャも嬉しそうに加わる。

「村にはたくさんの素敵な景色があって、特に夕暮れ時の丘から見る景色は絶景ですよ。あと、村祭りのときには色々な出し物もあって楽しいです!」


そんな話を聞きながら、ミツルは少しずつ異世界での生活がどのようなものか、想像を膨らませることができた。

しかし、まだ心の片隅には不安が残ったままだった。果たして、自分はこの世界でどう過ごしていけば良いのか、そして記憶は戻るのか…。


思い悩む彼に向かって、アリーシャがはにかむように微笑んだ。

「心配しなくても大丈夫ですよ、ミツルさん。私たちもできる限り力になりますから。一緒に頑張りましょう!」

その言葉に救われつつ、彼は自身の中にわずかに前向きな気持ちが芽生えるのを感じた。


新たな土地での新たな出会い、そして失った記憶を取り戻すための第一歩を彼はようやく踏み出そうとしていた。

誤字報告を頂きましたので修正しました。

抜けや誤字等多々あるかと思いますので、見つけたら遠慮なくコメント下さい。

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― 新着の感想 ―
 ミツル君は気を苦喪失になってしまったんですね。  物語をすすめつつ、過去にも想像が膨らんで、とても良い展開作りだと思いました。  次回も楽しみです。  また、「」と地の文を同じところに入れているも…
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