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異世界養蜂革命  作者: 華蜂師
第2章:蜂蜜の発展と旅立ち。
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第16話: 新たな展開への緒

フローリア村に朝日が昇り、柔らかな光が村全体を包み込む。

アリーシャ、ミツル、エルザの三人は、今日の行商に対する期待と少しの不安を抱えながら準備を進めていた。

それはベリル村への2度目の訪問、しかし初めての正式な行商であった。


彼らは荷台にハニィウィング産とスティンガービー産の蜂蜜を丁寧に詰めていく。

今回持参するのは、ヘリオスフラワーの蜂蜜、パラライザー・リーフの蜂蜜、ムーンブロッサムの蜂蜜の3種類だ。

ハニィウィング産は20ギル、スティンガービー産は60ギルで販売する予定で、それぞれの種類についてハニィウィング産は各10個ずつ、スティンガービー産は各5個ずつ用意した。


前回の試験販売が成功だったため、アリーシャたちは今回の商談に自信を持っていた。

「今日こそは、本格的にベリル村の皆さんにもフローリア村の素晴らしい蜂蜜を堪能してもらえるわね。」とアリーシャは明るく声をかける。


馬車に乗り込み、彼らはベリル村を目指した。道中は快晴で、風が心地よく吹きすさぶ中、彼らは明日の展望に胸を膨らませていた。


ベリル村に到着すると、商人ベックの待つ店を訪れた。前回のおかげで、ベックとはすっかり打ち解けた仲であり、彼の顔には笑みが浮かんでいた。

「待っていたよ!みんな!今日はどんな素晴らしいものを持ってきてくれたのかな?」

アリーシャたちはさっそく、今回持参した蜂蜜をベックに見せる。

「前回の評判が良かったので、今日はこれだけの種類を持ってきました。きっと気に入っていただけるはずです」とアリーシャは自信をもって答える。


ベックは興味津々で蜂蜜を手に取る。「このヘリオスフラワーの蜂蜜は、前回来た時に試食させてくれた奴だよね!かなり美味しかったし、村人たちの評判も良かったんだよ!ハニィウィングとスティンガービー、それぞれの蜂蜜の香りをもう一度確かめてみたいね。」ベックは笑顔で一口試食し、満足そうに頷く。

「これは、前回以上に素晴らしいね。村の人たちもこの味を心待ちにしているはずだよ。」ベックは早速うちにどの程度の量を卸せるのか相談したいみたいだ。


アリーシャたちが提供する蜂蜜は前回の試験販売ですでに噂が広まっていたためか、多くの村人たちが興味を示し、ベックのお店に何人からも問い合わせがあったとぼやかれてしまった。「この蜂蜜は本当に特別だわ!」と声を上げる人もいた。


ミツルは空き時間を見つけて村を見て回ることにした。彼は、ベリル村独特の文化や風習を知りたいと思っている。

村を巡っていると、彼の目に初めて見る不思議な風景が映り込んだ。それは広大な花畑で、色とりどりの花々が風に揺れ、香りが一帯に満ち溢れていた。

「フローリア村にはない景色だ、素晴らしいな。」ミツルはつい声をあげてしまう。

その畑では多くの村人たちが働いており、彼らの基盤となる産業が花や植物の栽培であることがわかる。

これらの花々の中には、エルザが探している薬効成分を持つハーブや植物が含まれているかもしれない。


一方、エルザは市場でハーブや植物を探していた。

彼女は、フローリア村での蜂蜜の生産に役立てるための情報を収集していた。「ベリル村の自然には、使えそうなものがたくさんあるわね。」とエルザは、目を輝かせながら言う。

彼女は慎重に選び出したハーブや花の種をまとめ、高品質な蜂蜜を作るための手がかりを持ち帰る。


アリーシャも村を歩き周りつつ、特産品や新たな商品のヒントを探していた。

市場では、ベリル村特有のスイーツや加工品などが並んでおり、その中にはフローリア村ではあまり見当たらないものもあった。

「これをフローリアで取り入れられたら面白いかもしれないわ。」と彼女は思案しつつ、その一つをお土産に買って帰ることにした。


数日滞在している間にベックのお店では持ってきた蜂蜜が完売してしまっていた。

ベックはその成果に満足し、さらなる注文を打診してきた。

彼は、「この品質なら、定期的に扱いたいね。うちで売れば、村の人々も喜ぶこと間違いなしだ。」と微笑む。


アリーシャたちは、蜂蜜が人々に喜ばれたことを確信し、着実な一歩を踏み出した。

彼らは、これからもベリル村との関係を深め、村同士の連携を広げていく決意を新たにする。

夕暮れが近づき、風も少し冷たくなり始める頃、一行はフローリア村への帰路に着く。彼らは無事に売り切れた蜂蜜と共に心に大きな収穫を得て、村へと帰っていった。


帰村後、アリーシャたちは村人たちにベリル村での成功と出来事を報告した。「今回も大成功だったわ! この調子でいけばもっと大きなビジネスチャンスが生まれるはずよ。」とアリーシャは胸を張る。


ミツルも手に入れた新たな知識や道具を見せつつ、これからの計画を話し始める。「もっと多くの蜂蜜を効率よく生産できるように、この道具を活用しようと思う。」


そして、エルザは手に入れたハーブや花の種を見せ、「これで新しい蜜源を開拓していけるわ。この花からどんな蜂蜜ができるか楽しみね。」と期待に満ちた表情を見せる。


村人たちはその報告を喜び合い、フローリア村の未来に期待を込めて拍手を送った。村全体が一体となって、発展へ向けて歩みを進めようとしていた。


この旅を通じて、アリーシャたちはただの商人としてだけでなく、村を牽引する存在としての責任と喜びを感じ始めていた。蜂蜜が結ぶ縁は、村を支え、人々の心をつなぐ大いなる力となり、この先も新たな展望を開いていくことだろう。

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