第14話 フローリア村の恵み、希望の行商
フローリア村の薬草店。その小さな店内は、エルザとミツルの共同作業によって作られた蜂蜜の甘い香りで満たされている。
特にスィンガービーの蜂蜜は村内で評判を博しているけれど、問題が山積みなのが現実だ。採取が非常に難しい上に、毒を取り除く方法もまだ確立できていないうえ、養蜂用のスィンガービーもまだ全然いないので日常的にはこの蜂蜜に頼ることはできなかった。
だからこそ、村の日常を支えるのが「ハニィウィングの蜂蜜」だ。
この蜂蜜は普通の花から無理なく採取でき、数も安定しているから、とても人気がある。
薬草の花からも蜜を集めているハニィウィングも沢山いるので効果の高い蜂蜜もある程度確保出来る!
ある日、アリーシャは村の会合でふとした思い付きから提案を持ちかける。「ねぇ、ミツル、エルザ。この素敵な蜂蜜、もっと多くの人に知ってもらいたいと思わない?」
「そうだね、せっかくこんなに美味しいんだから」とミツルが頷き、棚に並ぶハニィウィングの蜂蜜の瓶を指で示す。「これをもっと広められたら最高だと思うよ!」
そこでアリーシャは村の女性たちを巻き込んで、ハニィウィングの蜂蜜を使った美味しいお菓子やパンを作ろうとアイデアを広げる。
「この甘さと香り、ジャムやパンにしたら最高よね」と彼女は情熱を込めて語る。
「それいい!私たちみんなでやってみよう!」村の女性たちから次々と賛同の声が上がり、村全体が活気づいてくる。
「このハニィウィングの蜂蜜、やっぱり最高よね」と興奮気味に話は弾む。
エルザも新しいアイデアをつぶやきながら、「薬草の花から採った蜂蜜をどう活かすかだって面白いんじゃないかな」と考える。
「特定の効果がある蜂蜜なら、それもセールスポイントになるしね。」
この村には、ハニィウィングの蜂蜜とあわせて売り出すための、いくつかの薬草から採取した特別な蜂蜜もそろっている。
たとえば、パラライザー・リーフの蜂蜜は痛みを和らげる鎮痛作用があり、ハニィウィング産は20ギルだ。
ヘリオス・フラワーの蜂蜜は傷の回復を促進し、ハニィウィング産で20ギル。
そして、ムーンブロッサムの蜂蜜は安眠効果があり、こちらもハニィウィング産は15ギルで提供されている。
村の女性たちは、これらの蜂蜜を使ってパンやジャムの試作に早速取りかかっている。
「ふわふわのパンに、この蜂蜜の甘みが絶妙ね!」と、彼女たちは試行錯誤を重ねている。その一方で、村外への販路はまだ開かれていないことが悩みの種でもあった。
村長は会合で心配そうに問いかける。「これを外に売り出すために、どんな手を打つべきだろうか?」
アリーシャはその質問に冒険心を持って答える。「私が行商に行きますよ!エルザ、ミツル、力を貸してもらえると心強いな。」
実際にどのように運ぶかという計画も詰める必要があるけど、その意気込みは十分だった。
彼らの行き先は近隣の大きめの村「ベリル村」。
フローリア村から少し離れているけれど、新しい市場としては魅力的。「行商の準備も整えたら、ベリル村のお祭りに合わせて出発の計画を立てよう」とアリーシャが地図を広げて言う。
「そうだね、準備万端で臨みたいね」とミツルも賛成する。エルザも「道中の安全についても考えておかなくちゃね。冒険者のギルドがあるのなら、そこで何か協力を仰げるかも」と新たな可能性を模索する。
その日、薬草店でアリーシャが蜂蜜のラベルを見ながら確認している。「普通の蜂蜜で10ギル、ハニィウィングの蜂蜜は20ギルとで価格はもう決まってるから、ベリル村でどんなふうに展開するかを考えないとね」
エルザも納得しつつ「この蜂蜜を広めるチャンスがあれば、フローリア村の訪問者がもっと増えるかもね」と期待の声をかける。
ミツルは棚の瓶にラベル貼りを始めながら、「一つ一つ丁寧に準備して、みんなに試してもらえるようしないとね」と笑顔を見せる。
三人は手を動かしながら、希望に満ちた未来を心に描いている。
フローリア村と彼らの蜂蜜、これからどんな展開が待ち受けているか、まるで新しい冒険のスタートを見舞されているような、ワクワクした雰囲気が漂っている。この村の未来には、甘くて豊かな可能性が広がっていた。ちにしていた。




