141話:アースクローラーとの絆
「ただいま戻りました!」ミツルとティグはガレスと数匹のワーウルフ、そしてオーガを従えてリハルトの蜂蜜街道拠点へと帰還した。
「おかえりミツル!ティグ!」エルザとアリーシャが出迎えてくれる。二人の顔を見てミツルとティグは安堵の表情を浮かべた。
「二人とも元気そうでよかったよ。留守の間色々あっただろう?」ミツルが労いの言葉をかけるとエルザとアリーシャはミツルたちがいない間の出来事を報告してくれた。これと言って問題は無いし、アースクローラーの幼虫の観察も順調のようだ。
「そうかそれはよかった。みんな本当に頑張ってくれているんだな」ミツルは仲間たちの努力に感謝の言葉を述べた。ティグもまた蜂蜜街道の進展を聞き嬉しそうに頷いた。
「ミツルさん、ティグおかえりなさい」 「レン、リィナ久しぶりだね!」再会を喜び合うミツルとティグ。
そこへ「ひさしぶりだねミツル。随分賑やかな面々を連れているが、話に聞いていたモンスターテイマーの師匠と従魔なのかな?」とニヤリと笑みを浮かべたバルドウィン卿とアンドリュー。
そして「おおミツル、ティグ無事に戻ったか!修行の成果は…後ろを見れば分かるが順調みたいだな!」とアッシュ率いるシルバーファングのメンバーが現れた。
続いて「おー!ミツル!ティグ!無事でよかったぞ!」 「待っていたぞミツル!ティグ!」とエリオットやドラゴンテイルのメンバー、レイラが笑顔で二人を迎えた。
「ただいま戻りました皆様!修行する時間頂きありがとうございます!」ティグが深々と頭を下げる。
ミツルも皆に笑顔で挨拶をした。「みんな揃ってるならちょうどいいので、早速だけど進捗等情報共有の会議を開こうと思うのですがどうですか?」ミツルの言葉に皆真剣な表情で頷いた。
「まずはミツルたちを迎える前に報告を受けていたティグとミツルの修行の成果報告をお願い出来るかな?」バルドウィン卿の言葉に皆の視線がミツルとティグに集まる。
「はい!このまずこの方は、俺たちが修行でお世話になったベテランモンスターテイマーの師匠ガレスさんです!そして修行の中で仲間になったワーウルフ達と…」ミツルは最後にオーガを紹介しようとしたが言葉を詰まらせた。オーガはリハルト周辺では出没しない強敵なので人々にとって恐怖の対象でしかない。
「こやつはオーガだよ。ミツルたちと心を通わせた数少ないオーガの一匹だな!だから暴れる事は無いから安心してくれ!」ガレスがミツルの代わりにオーガを紹介した。
リハルトの人々はガレスの言葉に驚きを隠せない。「オ、オーガ…?!」 「ミツルたちが心を通わせた…?」
「ミツル、ティグ、一体どういう事だ?」エリオットが二人に問いかける。ミツルはリハルトの人々にガレスの元で経験した修行の内容を詳しく説明した。魔物との絆を深めることの重要性、そしてオーガとの共闘を通して得た学びを熱く語った。
「なるほど…ミツルたちは本当に貴重な経験をしてきたんだね!」エルザはミツルの話を聞いて感心した様子で言った。アリーシャもまたミツルの成長に目を細めた。
「評判は効いていたが、やはりガレスさんは凄腕のモンスターテイマーって聞いてたから二人を修行に向かわせて良かったよ!二人の話を聞く感じだと、アースクローラーに関しても何かしらの対応策とか色々考えてるんだろ?」とアッシュがミツルとティグに話しかける。
「アッシュさんには素晴らしい人を紹介してもらって本当に感謝してます!しかもこうして僕達のプロジェクトにも協力してくださるみたいでかなり心強いですよ!」とティグがアッシュとガレスに感謝の意を伝える。
「そんなに持ち上げられても俺が出来るのはモンスターテイマーとしての経験や知識を教えるだけで、それ以外は出来ないぞ?」と褒められ慣れてないのか、謙遜しながらガレスが話す。
「じゃが…アースクローラーとどうやって絆を結べばいいんじゃろうか…?やつらは言葉も通じんし何を考えておるのかも分からん」ロータスは不安げな表情で呟いた。ミツルもまたアースクローラーとの意思疎通の難しさを感じていた。
「ロータスさんの言う様に確かにアースクローラーと心を通わせるのは容易なことではありません。しかし不可能ではありません!ミツルやティグにも話しましたが、成虫は難しくても幼虫の時から心を通わせようと頑張っているアースクローラーなら可能性は無い訳では無いと思います!」ガレスは静かに語り始めた。
「魔物と心を通わせるにはまず彼らのことを理解することが大切です。彼らの生態、習性そして何を考えているのか…それらを理解することなしに真の絆を結ぶことはできません」ガレスの言葉にミツルたちは真剣に耳を傾けた。
「アースクローラーの場合は特に土属性魔力との関係が重要になるじゃろうな。彼らは土属性魔力を操り土壌を豊かにする力を持っておる。彼らの生態を知るには土属性魔力についても学ぶ必要があるじゃろうな」ロータスはガレスの言葉に頷きながら言った。
「土属性魔力のことならロータスさんに教えていただけませんか?」エルザがロータスに尋ねた。
ロータスはエルザの言葉に快く応じた。「わしが知っておることは何でも教えよう。アースクローラーと共存するためじゃ!わしも協力せんとな!」
「ありがとうございますロータスさん!」エルザはロータスに深々と頭を下げた。
「しかしアースクローラーと心を通わせることができても、やつらが蜂蜜街道を襲うのを止められる保証はどこにもないぞ」とボリスが厳しい表情で口を挟んだ。
「確かに。アースクローラーが蜂蜜街道を襲う理由を解明し、根本的な解決策を見つけなければ共存は難しいだろう」フィンバルも深刻な面持ちで頷いた。
「その点は現在専門家のレオン先生に調査を依頼している。近いうちに先生から報告を受ける予定だ」バルドウィン卿が説明する。
「俺達もレオン先生の調査の為にアースクローラーの巣の近くに居たり、色々観察したりしてたからな!レオン先生はそれらで分かった事やメモ等を今まとめてるよ!それがまとまったらきっと少しは前に進むんじゃないか?」
「エルザやアリーシャは俺がいない間幼虫の飼育観察していたけど、そこで何か分かった事とか新たな発見とかはあった?」とミツルは今迄聞き役に徹していた二人に話を振る。
「エルザと二人で色々試してみたり話し合ったりしたけど…あくまで仮説だけど、アースクローラーの幼虫は人間や生物や植物にとって有害な物が主な栄養素みたい。だから人間の為に!って言う訳じゃなくて、自身の成長の為にやっている事が人間や植物や生物等にとって有益だから古代では神聖視されてたんじゃないかな?」とアリーシャが報告する。
「毒草や生物や魔物の排泄物や死骸、腐敗した肉等を好んで食べているのは観察の結果間違いないわね!でも成体みたいにハニィウィングとかの蜂の魔物や生きている魔物とかを捕食するって言うのはしないみたい。」とエルザも観察結果を報告する。
「成体も普段から蜂の魔物や巣等を捕食している訳じゃなかったぞ?する個体としない個体があったな。俺なんかは専門じゃないから細かい事は分からないけど、成体も周りに危害を及ぼしたりむやみに森とかを破壊するような行動をしている感じは無かった気がする。」とレオンと一緒に成体の観察に同行していたシルバーファングのオリバーが感想を言う。
「確かにオリバーの言う通りね。気性が荒かったり、蜂の魔物や巣を攻撃しているのはもしかしてメスなんじゃないかしら?幼虫の為に餌を集めたり子育ての為の栄養摂取が理由ならオリバーの言う事も説明出来る気がするけど…魔物でもそう言う生態はいるからね!」とセリーナが持論を展開する。魔法使いだけあって理論立てた考察だ。
「ロータスさんその辺どうですか?俺的には可能性としてはあるかな?と思うんですが…」とミツルがみんなの意見をロータスに質問する。
「古代文献には無いが、わしもその可能性が高いと思う。後は幼虫では無く成体の生態調査がある程度出来れば答え合わせが出来そうじゃな!」とロータスも自分なりの考えを話す。
「そうなると…やはりレオン先生の意見を聞いてみるべきだな。」とバルドウィン卿が話をまとめた。そして一旦会議は休憩に入る。




