131話:魔法による制御実験、成功と課題
「ふむまだ小さいのう。こやつらなら制御しやすいかもしれんの」ロータスは幼虫をじっと観察しながら呟く。
「ロータスさんこの幼虫を使って蜂蜜街道の整備に活用できないでしょうか?」ミツルが目を輝かせて提案する。
「なるほど。幼虫の土壌改善能力を利用するというわけじゃな」
「はい!幼虫の力を借りれば難航している区間の工事も捗るはずです!もしくは荒廃した土地を蘇らせて蜜源植物等の育成に貢献出来る可能性があると思うんです!」
周囲にはミツル、エルザ、アリーシャ、ティグ、レン、リィナ、そしてレオンも集まっている。
ロータスは思案顔で頷く。「試してみる価値はあるかもしれんの。ただ幼虫とはいえアースクローラーじゃからな。制御や管理等の研究は慎重に行わんとな。」
「よしまずはここで実験してみようかの」そう言うと地盤が固く整備が滞っている個所にアースクローラーの幼虫を放つ。
すると幼虫は地中に潜るべくウネウネと動きながら硬い土の中に潜っていった。
「すごい…。本当に土を耕してる…」レンはアースクローラーの行動に感嘆の声を漏らす。
「しかし…」ロータスは実験成功の喜びよりもむしろ不安そうな表情を浮かべている。
「どうしたんですかロータスさん?」エルザが尋ねる。
「…この幼虫、土壌の毒素を浄化しながら成長するようじゃな」
「毒素を浄化…?」エルザは目を丸くする。
「ああ。わしの魔法で土壌に微量の毒素を検出したのじゃが…それを好んで吸収しておる。まるで…汚染された土壌を浄化するかのように…」ロータスは驚きと戸惑いが入り混じった表情で告げた。
「そうね…でも…」エルザが不安そうに口を開く。「私達の思った通りに動いてくれる保証はないわ。もし意図しない影響が出たら周辺地域に悪影響があるんじゃないかしら。」
確かに幼虫の動きは次第に激しくなり始めていた。あまりの暴れっぷりに地面が大きく揺れ周囲の木々が倒れ始める。
「まずい!幼虫の制御が効かなくなってない?!」アリーシャが叫ぶ。
「くっ…わしの土魔法では行動を制限する位が限度かもしれん…」ロータスは悔しそうに呟く。とりあえず一行は幼虫たちを捕獲し今回の実験をひとまず終了することにした。
「アースクローラーの幼虫を完全に制御するのはやはり難しいようじゃの」帰路につきながらロータスが言う。「もっと幼虫の習性を利用した別の方法を考えなあかんかもしれん」
「そうですね…」エルザも同調する。
「まずは幼虫の生態についてより深く知る必要がありそうです」
「アリーシャ幼虫の食性とか行動パターンとか観察してもらえるかな?」
「任せて!園芸の知識を活かしてしっかり調べ上げてみせるわ」
「しかし制御が難しいとなると…」ティグは頭を抱える。アースクローラーの力があれば蜂蜜街道建設は飛躍的に進むはずだった。しかし制御が不安定では逆に危険な存在になってしまう。
「諦めるのはまだ早いよティグ。方法は必ずあるはずだ」ミツルは諦めずに前を向こうとする。
「ロータスさん何か制御を安定させる方法はないんですか?」エルザもロータスに希望を託す。
「うむ…いくつか考えられる方法はあるが…」ロータスは再び考え込む。「例えばアースクローラーの好む環境を整えて精神を安定させる方法じゃ。あるいは、土属性魔力を帯びた鉱石などを用いてより強力な制御魔法を開発する方法も考えられる」
「なるほど…!」エルザはロータスの言葉に希望の光を見出す。
「それなら私たちにも協力できることがありますね!アースクローラーの好む環境…餌や住処についてもっと詳しく調べてみましょう!」アリーシャも前向きに提案する。
「そうだな!俺たちはアースクローラーと直接触れ合ってきた経験がある。きっと何か役に立つ情報を見つけられるはずだ!」ティグもやる気を取り戻す。
「レオン先生にも協力お願い出来ますか?先生の知識があれば土属性魔力と幼虫の関係性について何か新しい発見があるかもしれません」ミツルも積極的にアイデアを出す。
「そうじゃな。幼虫を活用するにはまだまだ課題が山積みじゃが一つひとつ着実に解決していこうぞ」ロータスが皆を鼓舞する。
「私も土属性魔法についてもっと深く研究してみます。レオン先生ご協力をお願いできますか?」エルザはレオン先生に協力を仰ぐ。
「もちろんですミツルさん!エルザさん!私もアースクローラーについては興味深い研究対象です。協力して研究しましょう!」レオンはエルザの申し出を快諾する。
「よし!じゃあみんなで力を合わせてアースクローラーの制御方法を確立しよう!」ミツルは仲間たちを鼓舞する。
アースクローラーとの共存は決して簡単な道ではない。しかしミツルたちは諦めずに一歩ずつその道を進んでいくことを決意した。
「ああ!蜂蜜街道の未来のためにも絶対に諦めないよ!」ミツルの力強い言葉に一同が心を一つにして頷いた。
アースクローラーの幼虫との共生ですら予想以上に困難を伴うものだった。だがミツルたちの前向きな意思と団結力があれば必ずや道は開けるはずだ。
人とアースクローラーが手を取り合う!その日まで地道な努力を重ねていくことを誓い合うのだった。




