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異世界養蜂革命  作者: 華蜂師
第8章「アースクローラーの影」
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120話 対立と葛藤、共存か駆逐か

調査隊がリハルトに帰還し、数日後。再びミツルの家の広間に関係者が集められた。彼らの顔には前回の会議よりもさらに深い不安と緊張の色が浮かんでいた。

アースクローラーの存在は蜂蜜街道の未来を大きく揺るがす深刻な問題として人々の心に重くのしかかっていた。


「…では改めて調査隊の報告を聞いてみよう。」バルドウィン卿が静かに口を開くと視線はミツルに向けられた。ミツルは頷き隣に座るティグに合図を送る。

「えーっと今回の調査で…あの巨大な魔物は間違いなく“アースクローラー”だってことが分かりました。」ティグは少し緊張した面持ちで報告を始める。

調査隊に参加した他のメンバーも神妙な顔つきで耳を傾けていた。


「…ロータスさんの言うとおり奴らは土属性の魔力に反応して蜂の魔物の巣を探し出すことができるみたいです。俺たちが見た現場でもハニィウィングの巣だけじゃなく他の魔物の巣も襲われてた…。」レンが補足するように説明を加える。

リィナは調査中に見たアースクローラーが地面に潜っていく様子を身振り手振りで再現してみせた。

「…奴らは夜行性で昼間は地中に潜って休んでいることが多いようです。そして夜になると土属性魔力を使いながら餌を探し回る…。」エルザは調査で得られた情報を整理しながら報告する。


「…繁殖についてはまだ詳しいことは分かっていないが、ロータスの爺さんが言うには春から初夏にかけてが繁殖期でメスは地中に数十個の卵を産むらしい。卵は約1ヶ月で孵化し幼虫は約1年で成虫になる…。」アッシュがエルザの報告に補足する。

「…寿命は5年から10年程度と考えられています。知能は他の魔物に比べて高いようで学習能力もあるようです…。」セリーナが冷静な口調で付け加える。


会議室は調査隊の報告が終わると静まり返った。アースクローラーの脅威は想像以上に深刻なものだった。

バルドックが重苦しい沈黙を破るように口を開く。「…なるほど…。想像以上に厄介な相手だな…。こうなると蜂蜜街道の事業は大幅に見直さざるを得ないかもしれない…。」

オルガも不安を隠せない様子で頷く。「…確かに…。このままでは養蜂場が襲撃される危険性が高すぎる。蜂蜜の生産にも大きな支障が出てしまう…。」

「…ミツルどうするんだ?」エリオットがミツルの方を向き真剣な表情で尋ねる。他のメンバーもミツルの決断を待っていた。


ミツルはしばらく沈黙した後ゆっくりと口を開く。「…俺はやっぱりアースクローラーを駆除するというのは最後の手段にしたい。彼らにも生きる権利がある。むやみに命を奪うべきではない…。」

ミツルの言葉にエリオットは顔をしかめる。「…ミツルは甘いんだよ。あれだけの脅威を前に綺麗事言ってられる状況じゃねえだろう!さっさと討伐隊を組んでぶっ潰すべきだ!」

「…エリオットの言うことも分かるぜミツル。俺たちだって危険な魔物は容赦なく倒してきた。だが…今回はちょっと違う気がするんだ…。」ライアンが複雑な表情でミツルの肩を叩く。


「…ミツルお前がそう言うなら俺たちはお前の判断を尊重する。だがあまり無理するなよ。」アッシュがミツルの目をじっと見つめながら静かに言う。

ミツルはアッシュの言葉に力強く頷く。「ありがとうございます!俺は必ずアースクローラーとの共存の道を探ってみせる。」

「…ミツル甘いぞ!そんな綺麗事だけで事態が解決するほど世の中は甘くないんだよ!」フェリスの冒険者ギルドのギルドマスターのダンが声を荒げる。彼は調査前にティグ達の話を聞いた時からアースクローラーの存在に不安を抱いていた一人だった。


「…ダンさん落ち着いてください。まだ可能性を捨て去るには早すぎると思います。」アリーシャがダンをなだめようとするがダンは興奮した様子で言葉を続ける。

「…可能性だと?そんな悠長なことを言っている場合か!アースクローラーは我々の生活を脅かす危険な魔物だ!一刻も早く駆除すべきだ!」ダンの言葉に賛同する声がいくつか上がる。会議室は再び騒然とした雰囲気に包まれた。ミツルは深呼吸をし心を落ち着かせる。


「…皆さんどうか落ち着いて聞いてください。確かにアースクローラーは脅威です。しかし彼らを一方的に悪者と決めつけるのは間違っているのではないでしょうか?」ミツルは静かにしかし力強く言葉を続ける。

「…ロータスさんの話では、アースクローラーは土を耕し土壌を豊かにする力を持っているそうです。もしかしたら彼らとの共存は蜂蜜街道だけでなくこの地域全体の農業発展にも繋がるかもしれない…。」ミツルの言葉に会議室は再び静まり返る。人々はミツルの言葉に新たな可能性を感じ始めていた。

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