118話 アースクローラーの巨影、再び
薄明かりが差し込む早朝。アースクローラー調査隊はリハルトの門前に集結した。
ミツルを筆頭にエルザ、ティグ、レン、リィナ、エリオット、ライアン、サラ、アッシュ、セリーナ、オリバー、カレン、そして老魔術師ロータスとバルドックが紹介してくれた現場周辺の地理に詳しいベテラン冒険者二人。
総勢15名の精鋭たちが蜂蜜街道の未来を背負い未知なる脅威へと立ち向かう。
「よし!みんな準備はいいか?」ミツルが力強く声をかけると隊員たちはそれぞれの武器や道具を確認し決意に満ちた表情で応える。
「ああいつでも行けるぜ!」エリオットが自信に満ちた笑みを浮かべる。
「任せてくださいミツルさん!」ティグも力強く拳を握りしめる。
「今回は危険な任務になるかもしれんがくれぐれも気を付けるんじゃぞ。」ロータスは老獪な眼差しで隊員たちを見渡す。
「大丈夫だロータス爺さん。俺たちはもう子供じゃねえんだよ。」アッシュが肩をすくめて笑う。
ミツルは隊員たちの顔を一通り見渡し深く息を吸い込む。「…よし!アースクローラー調査隊出発!」
ミツルの号令と共に調査隊はリハルトの門を後にした。馬車に揺られること数時間、彼らはティグたちが巨大な魔物に遭遇した場所に到着した。
「…ここがあの魔物を見た場所か…。」エリオットは周囲を見回し呟く。
辺りには巨大な魔物が通ったと思われる痕跡が生々しく残されていた。倒された木々引き裂かれた草木深くえぐられた地面…。その光景は彼らの心に改めて緊張感をもたらした。
「…間違いない。あの魔物の足跡だ。」ティグは地面に深く刻まれた巨大な爪痕を指さす。
「…これは…相当な大きさだな…。」ライアンもその巨大な爪痕に驚きを隠せない。
「…ロータスさん。この足跡から何か分かりますか?」エルザはロータスに尋ねる。
ロータスは老眼を凝らしながら爪痕をじっくりと観察する。「…うむ。これは間違いなくアースクローラーの足跡じゃ。大きさから見て成体だろう。かなりの力を持っているようじゃな…。」ロータスの言葉に隊員たちは顔を見合わせる。
「…ミツル。どうする?このまま奴の足跡を追うか?」アッシュがミツルに尋ねる。ミツルは少し考え込む。
「…そうしたいですね。奴の行き先を突き止めれば巣の場所も分かるかもしれませんので。ですがくれぐれも深追いはせず細心の注意を払いましょう!この魔物は思っている以上に危険な存在かもしれない…。」ミツルはみんなに警戒を呼びかける。
「…了解だ。」
「…分かってるよ。」
隊員たちはそれぞれ武器を構え周囲を警戒しながらアースクローラーの足跡を追って森の奥へと進んでいく。
しばらく進むと森の中に開けた場所が現れた。そこには巨大な穴が空いており周囲の土は深く掘り返されていた。
「…これは…!」ティグはその光景を見て息を呑む。それは紛れもなくアースクローラーが地面に潜った跡だった。
「…奴はこの下にいるのか…?」レンが恐る恐る穴の中を覗き込む。
「…気をつけろレン。奴が突然飛び出してくるかもしれないぞ。」サラがレンに注意する。
その瞬間地面が大きく揺れ轟音と共に巨大な影が穴の中から出てきた。
「…うわあああああ!」
隊員たちは突然の出来事に驚き慌てて後方へ飛び退く。巨大な影は突如その姿を現した。
それはティグたちが目撃したあの巨大な魔物だった。黒く頑丈そうな体躯、巨大な顎、そして鋭い爪。その姿はまさに古代文献に記されていたアースクローラーそのものだった。
「…ゴゴゴゴ…!」アースクローラーは威嚇するように低い唸り声を上げる。その巨体から発せられる威圧感は圧倒的で隊員たちは身動きが取れなかった。
「…あれが…アースクローラー…!?」エルザは図鑑とアースクローラーを見比べながら呟く。
ロータスは杖を握りしめアースクローラーを鋭い眼差しで見据える。「…間違いない。あれは古代の魔物アースクローラーじゃ…。」
アッシュは剣を抜き戦闘態勢に入る。「…ミツルどうする?戦うか…?」
ミツルはアースクローラーの姿をじっと見つめていた。その巨大な体躯、強靭な顎、そして地中を自在移動する能力…。ティグたちの報告通りこれは並大抵の魔物ではなかった。
「…いや今はまだです。まずは奴の行動を観察しましょう!現状アースクローラーから僕達は敵だと認識されていないみたいなので、距離を取り生態調査をしたいです。攻撃はあくまで自衛手段としてのみ使用で!」ミツルは冷静に判断し指示を出す。
隊員たちはミツルの指示に従いアースクローラーとの距離を取りつつその行動を注意深く観察し始めた。




