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異世界養蜂革命  作者: 華蜂師
第8章「アースクローラーの影」
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116話 リハルトへの帰還、重苦しい報告

リハルトの街並みが夕暮れの薄闇に包まれ始めた頃、ティグたちは疲れ切った体を引きずってリハルトの蜂蜜街道事業の拠点へと到着した。

調査の出発前は期待と希望に満ち溢れていた彼らだったが今は未知の魔物の脅威を目の当たりにした重苦しい空気を纏っていた。


「ミツルさん!エルザさん!アリーシャさん!大変です!」ティグの焦燥感に満ちた声が活気のある拠点の中に響き渡る。その声にミツル、エルザ、アリーシャが慌てて執務室から出て来た。

「ティグどうしたんだ?そんなに慌てて…。」ミツルはティグたちの様子を見て只事ではないと直感する。彼らの顔色は悪く疲労困憊の様子だった。同行していた若い冒険者たちも恐怖に怯えた表情を浮かべていた。


「…大変なことが起きました。新しい魔物…かなり巨大な魔物を見つけました!蜂の魔物の巣を襲って…。」ティグは息を切らしながら報告する。

エルザとアリーシャはティグの言葉に顔色を変えた。「…巨大な魔物…?蜂の魔物の巣を襲った…?」エルザは驚きを隠せない様子でティグに問いかける。

ティグは頷きながら詳しく説明を始めた。「…はい。今まで見たこともない巨大な魔物でした。黒光りする硬い外皮に巨大な顎…。そして地面に潜ることもできて…。蜂の魔物の巣をいとも簡単に破壊し蜂蜜も幼虫も成虫も全て食い尽くしていました…。」ティグの言葉にミツルたちは言葉を失った。


蜂蜜街道にとって蜂の魔物たちはなくてはならない存在だ。その蜂の魔物たちを襲う魔物が出現したとなると蜂蜜街道の未来は大きく揺らぎかねない。

「…これは大変な事態だわ…。」エルザは深刻な表情で呟く。アリーシャも不安そうな顔でミツルの方を見た。「ミツル…どうする…?」

ミツルは少し考え込んだ後決意を固めたように言った。「…すぐに緊急会議を開こう。バルドウィン卿や冒険者ギルド商人ギルドにも連絡して情報を共有し対策を考えなければ…。」


ミツルはすぐに執事のアンドリューに連絡を取り緊急会議の準備を指示した。アンドリューはミツルの指示を受けると迅速に関係者への連絡を開始した。

数時間後ミツルの家の広間には多くの関係者が集まっていた。

バルドウィン卿、アンドリュー、冒険者ギルドのギルドマスターであるバルドック、商人ギルドのギルドマスターであるオルガ、そして「ドラゴンテイル」のエリオットたち「シルバーファング」のアッシュたち。さらに近隣の街や村の冒険者ギルドと商人ギルドのギルドマスターたちも駆けつけていた。


「…皆さん本日は急な呼び出しにもかかわらず集まっていただきありがとうございます。」ミツルは集まった人々に頭を下げる。

「ミツル一体何があったんだ?これほどまでの人数を集めるということは…只事ではないと察するが…」バルドックが心配そうに尋ねる。

ミツルは深く息を吸い込みティグたちに調査で発見した巨大な魔物について説明するよう指示する。

ティグは改めて巨大な魔物の外見能力そして蜂の魔物の巣を襲撃していた状況を詳しく説明した。集まった人々はティグの報告に驚きと不安を隠せない様子だった。


「…なるほど。蜂の魔物を襲う巨大な魔物か…確かにこれは蜂蜜街道にとって大きな脅威になりえるな…」バルドックは腕組みをしながら深刻な表情で呟く。オルガも心配そうにティグに質問する。

「ティグその魔物は一体どれほどの数いるんだ?もし大量に発生しているとなると蜂蜜街道の事業は大きな影響を受ける可能性があるぞ…」

ティグはオルガの質問に首を横に振る。「…申し訳ありません。まだ詳しいことは分かっていません。ですが森の中で広範囲にわたって例の魔物であろう足跡を発見しました。数は少なくとも一匹ではないと思われます…」ティグの報告に部屋の空気はさらに重苦しくなった。


バルドウィン卿は眉間に皺を寄せながら口を開く。「ミツルこの魔物に対してどのような対策を考えているんだ?」

ミツルはバルドウィン卿の質問に少し間を置いてから答えた。「…まずはこの魔物の生態を詳しく調査する必要があります。その上で駆除もしくは共存の道を探ることになるかと思います…。」


ミツルの言葉にエリオットが声を上げる。「…共存?そんなことができるのか!?まだ詳しいことは分かっていないとはいえ話を聞く限りそんな凶暴な魔物と共存なんて出来る訳がないと思うんだが…個人的には早急に討伐隊を編成し駆除すべきだと思う。」エリオットの意見に賛同する声がいくつか上がる。


しかしミツルは首を横に振る。「…エリオットが言いたい事も分かる。だからこそもう少し時間をもらえないか?まだその魔物の生態はほとんど分かっていない。むやみに駆除に乗り出すのは危険すぎると思う。もしかしたら彼らにも生きるための理由があるかもしれないし、何も分からないからこそまずは調査を優先したい!」


ミツルの言葉にアッシュが静かに口を開く。「…俺もミツルの意見に賛成だ。確かにその魔物は脅威だ。だが俺たちは今まで多くの魔物と戦かってきた。生態系に悪影響を与える魔物も、駆除や討伐をするとかえって危険な魔物もいた。だからこそ今回もまずは調査をし、その上で最善の方法を探るべきだと思う。」アッシュの言葉に頷く者も多かった。


バルドウィン卿は少し考え込んだ後口を開く。「…うむ。確かにミツルとアッシュの言う通りだな。まずは調査を優先しよう。ミツルこの件に関しては全権を委任する。必要な人員や物資は遠慮なく要求してくれ。」

「…ありがとうございますバルドウィン卿。」ミツルはバルドウィン卿に深く頭を下げる。こうしてミツルを中心に未知の魔物への対策が本格的に始動することになった。


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